研究課題/領域番号 |
16K01342
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研究機関 | 一般財団法人電力中央研究所 |
研究代表者 |
齋藤 幹久 一般財団法人電力中央研究所, 電力技術研究所, 主任研究員 (90599218)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 雷 / 雷電流 / 電磁界 / 風力発電設備 / 東京スカイツリー / 数値電磁界解析 / 冬季雷 |
研究実績の概要 |
本研究は次世代のライフラインの安定な運用のため、電界観測を主軸とした雷パラメータの取得手法の確立を目的としている。具体的には観測された電界波形や気象データを用いて電流波形(雷パラメータ)を推定することが最終目的になる。2017年度の主な成果としては以下である。 1.落雷として設備に被害を与える事が最も多い、夏季の負極性下向き第一雷撃という落雷に関して、数値電磁界解析手法を用いることで、観測された電流波形および電界波形を同時に再現することに成功した。この結果を用いて今後落雷の電界データから電流波形を推定していく事で、次世代のライフラインに用いられる各種機器の耐雷設計の効率化が望める。 2.2017年度も2016年度に引き続き、東京スカイツリーの周囲に設置されている電界観測装置の調整を行い、観測も継続して行った。データを蓄積している。 3.冬季に日本海沿岸で送電線故障をおこす、GCと呼ばれる大電流を伴う上向き雷について数値電磁界解析を行い、観測された電流波形および電界波形を同時に再現することに成功した。この技術を用いて観測された電界波形から電流波形を推定することにより、送電線故障対策の進歩が期待される。今後スマートグリッドが進行することにより、送電線の空き容量がより詳細に管理される可能性があり、送電線故障の一層の詳細な解析も次世代のライフラインでは重要となる。 4.冬季に風力発電用風車で観測された雷電流のデータを解析し、風車ブレードにダメージを与える可能性の高い、エネルギーの大きい雷の発生する気象条件に関して解析を行った。風車のブレードは金属ではなく複合材料で出来ており、エネルギーの大きい雷に弱い。解析の結果、エネルギーの大きい落雷の発生する気象条件の絞込みにある程度成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で対象としている雷観測システムの調整が進んでおり、耐雷設計上もっとも重要である夏季の負極性下向き第一雷撃の電流および電界波形の同時再現に成功しているため、目的に向かって順調に進んでいると言える。さらに冬季に電力設備等に被害を与える可能性の大きい雷の解析も順調に進行しており、雷パラメータの取得方法の確立という目的に向けて順調に推移している。
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今後の研究の推進方策 |
研究は順調に進んでいるため、今までの結果を生かし、次世代のライフラインの効率的な雷害対策に必要な落雷のパラメータの取得方法を確立する。具体的には2017年度に成功した電界波形と電流波形の同時再現技術を用いて、観測された電界波形から雷パラメータ(電流波形)を推定していく手法を確立する。また、引き続き冬季に風力発電設備に被害を与える落雷のパラメータを明らかにすると共に、被害を与える落雷の発生条件(気象条件)の絞込方法や検出方法の高度化を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
2017年度は東京スカイツリーへの落雷が少なく、機器の最終的な調整を2018年度に行うため、繰越金が発生したが、2018年度の調整で使用するため、計画には影響がない。また、出席した国際会議の開催が2017年度末であったため、この費用分も2018年度に清算したため、2018年度に繰越が発生している。
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