研究課題/領域番号 |
16K01345
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
横澤 宏一 北海道大学, 保健科学研究院, 教授 (20416978)
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研究分担者 |
大槻 美佳 北海道大学, 保健科学研究院, 准教授 (10372880)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 記憶 / 高齢化 / 軽度認知障害 / 脳磁計 / α波律動 |
研究実績の概要 |
本研究では、シーケンシャルな記憶課題課題実行中のα波律動を脳磁計で計測する研究を行っている。その目的は、加齢や軽度認知障害に伴う記憶能力低下メカニズムを調べ、さらに記憶能力回復の方法を探ることにある。記憶対象がシーケンシャルに呈示され、そのすべてを順番通りに記憶しようとすると、シーケンスの序盤に呈示される記憶対象を保持したまま、中盤の記憶対象を新たに記憶しなければならない。このためシーケンスの序盤~中盤の記憶過程はワーキングメモリーに関連すると考えられる。一方、シーケンスの終盤での記憶は即時記憶である。すなわち、シーケンスの序盤~中盤と終盤では記憶過程が異なると考えられる。 本研究の1年目である平成28年度は、(1)高齢者の記憶の脳内処理過程を解析すること、(2)軽度認知症と脳内処理過程の関係を明らかにすること を並行して実施した。このため、60歳台の高齢者に実験に参加していただき、軽度認知障害スクリーニング法であるmoca (Montreal Cognitive Assessment) テストとシーケンシャル記憶課題実行中の脳磁場計測を実施した。この結果、高齢者群の記憶成績は若年者群に比べて有意に低いこと、さらにmocaの点数(軽度認知症傾向に相当)と記憶成績はシーケンスの序盤のみで有意に相関することがわかった。この結果は、軽度認知症傾向がワーキングメモリの賦活と相関することを示唆した。 ここまでの研究では、若年の実験参加者は大学院生がほとんどであった。一方、高齢の実験参加者には大学卒業者が少なく、その最終学歴に差があった。このことから高齢者と若年者の記憶成績や記憶過程の差異は、学歴の差ではないかという疑念が生じた。そこで、若年者群の学歴に幅を持たせ、受験勉強等による記憶訓練によって記憶成績や記憶過程に差が生じないことを確認する研究も追加実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は、当初予定していたSPM(Statistical Parametric mapping)法による脳内の記憶過程の解析があまり進捗しなかった。これはSPMの解析手順によって結果が異なることに研究途上で気がつき、正確な解析手順を確立するのに時間を要したためである。解析手順の確立は研究結果に信頼性を与えるために必須のプロセスであり、このような事態を想定して記憶過程の解析は平成28年度、29年度の2年間を充てている。平成29年度に十分な成果を挙げることで当初の計画以上に進捗するものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
高齢化や軽度認知障害に伴う記憶能力低下メカニズムの解析は、おおむね計画通りに推進する。最終年度に計画している記憶能力回復の方法については、提案時には情動をコントロールすることを計画していたが、被験者への正誤のフィードバック方法などにより「動機づけ」を与える方法など、他の方法も幅広く検討して実施する。
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