研究課題
本研究では、加齢や軽度認知障害に伴う記憶能力低下メカニズムの探究を目的として、シーケンシャルな記憶課題課題実行中の脳律動を脳磁計で計測する研究を行った。シーケンシャルに呈示された記憶対象を順番通りに記憶しようとすると、シーケンスの序盤に呈示される記憶対象を保持したまま、中盤の記憶対象を新たに記憶しなければならない。このため序盤~中盤の記憶過程はワーキングメモリ機能を反映すると考えられる。ワーキングメモリ機能は加齢の影響を受けやすいため、シーケンシャルな記憶課題課題を用いれば、加齢に特異的な記憶能力の低下を抽出して解析することが可能である。本研究ではα波律動(8~13 Hz)を主な計測対象としたが、交付申請書に記載したように他の周波数の律動も解析対象である。本研究によって脳磁場の信号対雑音比が顕著に向上し、他の周波数の律動でも解析可能となった。そこで、(1)軽度認知症傾向を対象とした研究では当初計画通りα波律動を主な計測対象としたが、(2)加齢に伴う記憶能力低下を若年者でシミュレートする研究ではθ波律動(5~7 Hz)に着目した。その結果、(1)では、軽度認知症傾向と記銘序盤の記憶成績が相関すること、軽度認知症傾向と楔前部の活動が相関することを見出した。これは楔前部の活動低下が軽度認知症傾向に伴う記憶成績低下の原因であることを示唆した。また、(2)では、若年者(20歳台)を対象として記憶対象の呈示間隔を短くすると、その脳内活動が高齢者(60歳台)に類似することを見出した。これは加齢に伴う認知処理速度の低下が記憶成績低下の原因であることを示唆した。超高齢社会においては、疾患性ではない高齢者の記憶能力の低下が、社会的コストを押し上げることになる。本研究により、加齢や軽度認知障害に伴う記憶能力低下の原因を示すことができたことは、その回復方法の開発上、重要な成果と考える。
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