研究課題/領域番号 |
16K01346
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
前田 英次郎 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (20581614)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 細胞張力 / 炎症反応 / 細胞外基質 / 剛性 / 細胞膜流動性 |
研究実績の概要 |
本研究課題は腱炎発症および進行のメカニズムの一端を明らかにすることを目的とし,細胞張力や細胞膜流動性といった腱細胞自らが有する力学的な特性が炎症生サイトカイン刺激に対する応答にどのように影響を及ぼすかを調べ、細胞の炎症反応が進行する機序の解明や,適切な力学状態に保つことで進行を抑制する可能性について検討するものである.2017年度はPDMS製マイクロピラーデバイス上で培養したウサギアキレス腱由来腱細胞に炎症性サイトカインIL-1beta刺激を与え,細胞形態の変化と遺伝子発現を調べる実験を行った.マイクロピラーの高さを変えることでピラーの剛性が変わり,それに応じて細胞張力も調整される.本研究では剛性の低いピラー(高さ8ミクロン)では細胞張力が低下し炎症反応が増幅され,剛性の高いピラー(高さ2ミクロン)では細胞張力がある程度維持され,炎症反応も抑制されるという仮説を検証する.年度中頃までに得られた結果を精査していくと,観察された現象は細胞接着が十分で無いことによって惹起された可能性があることが明らかになった.したがって,マイクロプピラーに細胞接着を促進させるためのコーティングタンパク質をコラーゲンからフィブロネクチンに変更し,再度同様の実験を行った.その結果,細胞張力を低下させた細胞では炎症性刺激による形態変化が顕著になり概ね仮説に沿った結果を得ることができた.また,マイクロピラーを使う同一の実験系でFRAP法を用いて細胞膜脂質流動性の計測を行ったところ,細胞張力の増減は細胞膜脂質流動性に影響を及ぼさないことがわかった.このことから,細胞張力を低下させた環境で炎症性刺激に対する応答が増幅されるメカニズムは,細胞張力の低下よる膜流動性の変化に伴ってIL1受容体の感受性や応答性が上がるという当初想定していたものでは無いことが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
細胞接着の改善を図る実験系の改善とそれに伴う再実験を行った為,計画より少し遅れている.
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今後の研究の推進方策 |
2018年度はIL-1beta刺激を作用させる際,低剛性培養基板により細胞張力が低下している細胞に対して, 1)UV-PDMSを用いて培養中に基板剛性を上げ,細胞張力を向上させる実験,2)引張刺激を付与して細胞張力を上げる実験を行い,IL-1beta刺激への応答が細胞張力の向上で抑制され得るかどうかを検討する.その他の計画していた実験項目についても順次遂行していく.得られた成果は積極的に学会発表・論文発表を行い,成果を広くアピールする予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
実験の遂行状況に応じて過不足の無いように助成金を使用したので,年度末に少額の余剰金が生じた.したがって,次年度の研究費として使用することとした.
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