研究課題/領域番号 |
16K01353
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
三浦 重徳 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 助教 (70511244)
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研究分担者 |
森本 雄矢 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (60739233)
根岸 みどり (加藤みどり) 東京大学, 生産技術研究所, 特任研究員 (30300750)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | TRPV6 / 微絨毛 / メカノリスポンス / 流体せん断力 / マイクロ流路 / MEMS |
研究実績の概要 |
力学刺激に応答して微絨毛を形成する細胞を探索するため、まず上皮・間葉系細胞を各種収集した。腎上皮、腸管上皮、乳線・前立腺上皮、肺胞上皮など上皮系細胞8種、間葉系細胞は、ラットより採取した骨、軟骨、椎間板、腱細胞等を含め計12種を収集した。現段階では全ての細胞を解析できていないが、肋軟骨より採取したラット初代軟骨細胞は、流体せん断力に応答して微絨毛を伸長することを見出した。一方、ヒト近位尿細管上皮細胞は、TRPV6を発現し刷子縁と呼ばれる微絨毛を有するが、比較的低速の流れ(0.1 dyn/cm2 以下)に対しては微絨毛の伸長は認められなかった。間葉系組織においては、伸展力が主要な力学刺激であると考えられる。そこで、3Dプリンタで作製したクランク機構とステッピングモータ、およびシリコーンゴムからなる培養基板を組み合わせることで、細胞への伸展刺激が可能なデバイスを開発した。本デバイスでは、モータのマイコン制御ならびにクランク機構のアーム長変更により、伸展刺激の頻度と伸展量を容易に変更できるようにした。新たに開発した本デバイスも利用し、力学刺激と微絨毛形成との関連性を継続して解析している。また、生体内におけるTRPV6の機能を細胞の力学応答の観点から解析するため、CRISPR/Cas9を用いたTRPV6ノックアウトマウスの作製を開始した。ファウンダーマウスの配列を解析した結果、標的配列付近において変異の導入が確認され、現在F1マウスを取得中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H28年度は、①力学刺激に応答して微絨毛を形成する細胞の探索、②伸展および圧縮刺激負荷デバイスの開発、③力学刺激に対して微絨毛形成能を有する細胞種の特性解析を主な目的としている。①、③については、上皮・間葉系細胞計20種を収集し、TRPVファミリーを含むメカノセンサー分子の発現解析および流体剪断に対する細胞応答解析を順次進めている。これまでに流体せん断力に対して微絨毛形成能を示す細胞1種を見出しており、一定の進捗がある。②については、分担者らと協力して独自の小型伸展刺激負荷デバイスを開発した。圧縮刺激負荷デバイスについては、必要に応じて来年度開発する予定である。TRPV6ノックアウトマウスの作製はH29年度に取組む予定であったが、周辺事情を考慮して早期に開始した。総じて、順調に進捗していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
収集した全ての細胞について力学刺激に対する応答解析を終え、TRPV6と力学刺激依存的な微絨毛形成能について関連性を明らかにする。TRPV6ノックアウトマウスは、骨粗しょう症、関節炎、不妊などの表現型を示すことが既に報告されているが、その分子機序は不明である。本研究では、これらの表現型に着目しながら、ノックアウトマウスにおける細胞の力学応答および微絨毛形成について解析し、力学刺激によって支持される組織形成・生体機能維持におけるTRPV6の役割を明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
収集した細胞の力学刺激応答解析を一部保留し、TRPV6ノックアウトマウスの作製を前倒しして実施した。そのため、解析に使用する抗体や遺伝子発現解析試薬購入に充てる予定の物品費に余剰金が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
引き続き収集した細胞の力学応答解析及びノックアウトマウスの解析に使用する予定である。
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