研究課題/領域番号 |
16K01355
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
大橋 一夫 大阪大学, 薬学研究科, 招へい教授 (40364062)
|
研究分担者 |
川端 健二 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 幹細胞制御プロジェクト, プロジェクトリーダー (50356234)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 肝細胞移植 / 臓器作成 / 組織工学 |
研究実績の概要 |
本申請研究では、肝細胞および非実質細胞が線状に配列したマイクロファイバー型肝オルガノドを作製する手法の開発およびその治療効果を把握することを目的とする。昨年度までの研究において、肝オルガノイド作製における基盤技術開発、マウス実験における肝不全モデル作成における肝不全誘導の条件設定について検討を行ってきた。これらの基盤研究をさらに発展させ、平成29年度においては、肝細胞とマクロファージや血管内皮細胞などの2種類の細胞から構成される組織体作成の意義を探索するとともに、実験動物の生体内において、これら肝オルガノイドに類似した組織作製を目指した技術開発を行った。肝細胞とマクロファージや血管内皮細胞などの2種類の細胞から構成される組織体作成については、平成28年度で至適化した各種条件(細胞密度や細胞注入速度)で作成した肝オルガノイドの機能を把握した。その結果、非実質細胞を至適割合で混合させることは、肝機能をより高く発現させることにおいて重要であることが明らかとなった。次いで、これらの肝オルガノイドを実験動物の生体内で作製するための基礎実験を行った。コラゲナーゼ灌流法にて分離精製した初代肝細胞を用いて実験動物の腎被膜下に至適条件で注入することで、肝細胞が線状に配列した肝オルガノイドを作製できることが明らかとなった。これら作製肝オルガノイドの機能を現在評価中であるが、現時点で、アルブミンやアンチトリプシンなどの肝特異的分泌タンパクを高いレベルで発揮することが明らかとなっている。次年度の研究において、肝不全における治療効果を評価予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度の研究において、分離肝細胞の機能をオルガノイド体の中で高いレベルで発揮させ、さらに、その機能レベルを維持させるためには、非実質細胞の混合が重要な要素であることが明らかとなった。さらに、非実質細胞をiPS細胞から分化誘導させたマクロファージや、血管内皮細胞において検討した結果、肝細胞との混合比率に至適レンジがあることも明らかとなった。これらのように、平成29年度までの研究において、肝機能発現を十分なレベルで発揮させるための肝オルガノイド作製の要素技術の開発は十分なレベルで行い得たと考えられる。これらの成果は、平成30年度の計画研究を遂行するにあたり、有用な情報であり、今後の研究の加速的実施が予想できる。
|
今後の研究の推進方策 |
平成29年度の研究成果を確実なものとし、また、さらに発展させるために、平成30年度では実験動物体内において肝細胞と非実質細胞の2種類の細胞(研究の進捗によっては3種類も検討)による肝オルガノイドを作製する研究を通じて、機能面ですぐれ、治療的にも意義の高い肝組織作製を目指す。実質細胞としては、コラゲナーゼ灌流法にて分離精製した初代肝細胞または株化肝細胞またはiPS細胞由来の肝細胞などを計画している。また、非実質細胞としては、iPS細胞由来のマクロファージ、血管内皮細胞、星細胞などの中から機能評価等を通じて、随時選択しながら、生体内での組織作製実験をすすめる。肝オルガノイドを作製する宿主マウスは、非病態下あるいは肝不全病態下におくことで、治療的な意義の探索も行う。オルガノイド体を動物移植前に組み上げる場合、そして、生体内に肝細胞と非実質細胞を移植することでオルガノイド作製を誘導する場合などを検討し、生体内での肝機能発現を高いレベルで行う肝組織工学的研究開発を進めるものである。平成29年度までに行った各種条件選定研究からの情報を集約させながら、平成30年度の計画研究を行うことによって肝オルガノドによる肝疾患治療の開発を目指した研究がより最適化され、より短時間に行えると予測できる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
(理由)平成29年度実施本研究の一部において、マウスを用いた肝不全病態の誘導実験を行った。施設内飼育のマウス増殖が予想よりも旺盛であり、マウスを予定外購入することなく動物実験が実施できた。そのため、マウス飼育および購入費用を節約することができ、次年度使用額が発生した。 (使用計画)平成29年度に引き続き、平成30年度の実施予定実験においても一部でマウスを用いた実験を予定している。平成29年度の残額を、マウスの購入・飼育・手術等にあてることにより、より多いマウスを用いた実験が可能となっている。動物実験の観察期間もより長期に行うことも計画する。
|