本研究では,手首で計測される筋電信号(以後EMGと略記)により学習された深層学習型(層の数が多い構造)のニューラルネットワーク(以後NNと略記)から認識ルール(規則性)を抽出し,それを用いて手首と指の動作を認識できる次世代の革新的インタフェースの基盤を構築することが目的であった. 最終年度はまず,深層学習用NNに必要な学習用データ数を効果的に増加させる仕組みを再度検討し,乱数を用いて学習データ数を増やす方法を再考した.また,その際に追加された学習データの有効性を評価する仕組みを検討した.評価する方法として,入力層での学習データに対して,t-SNEとUMAPの二つの非線形変換方法を適用して学習データの評価を行った.その結果,入力層で学習データの評価を行っても,最終認識精度を少し改善する効果があることが分かった.実際に,手首MGを用いるジャンケン認識と個人認証でで90%以上の高精度認識を実現できた.また,指文字(中国式の1~10の数字)認識を行える深層学習も実現しNNの構造を工夫することにより,高精度認識を達成できた. 最後に,認識用ルール抽出についてである.様々な仕組みを検討したが,結果的に畳み込み層を有する深層学習で効果的に識別ルールを抽出できる仕組みを開発することはできなかた.深層学習用NNの場合,層が深いだけでなく,畳み込み演算とプーリング演算の仕組みがあるため,申請者がこれまでに開発してきたルール抽出の仕組みを適用することが困難であった.今後は新たな仕組みの開発が必要であるが,例えば,入力層の信号を一度中間層付近の情報に関連付け,その中間層付近の情報と出力層の関係性をルール表現する仕組みが必要であると考えられる.
|