研究課題/領域番号 |
16K01359
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
関根 一光 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学系), 講師 (50447182)
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研究分担者 |
浜田 賢一 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学系), 教授 (00301317)
内藤 禎人 徳島大学, 病院, 助教 (20509773)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 生体適合性 / 生体材料 / 人工臓器 / 足場材料 |
研究実績の概要 |
平成28年度における研究目的を1.純チタンウレタン化固定法による細胞賦活効果の評価,および2.チタン基材上へのチタン多孔質部作成によるセミオープン構造焼結体作成方法の確立と評価,として研究を進めた。 1について,第一段階として細胞レベルでの細胞賦活効果の評価について,未処理群,処理の中途過程となる水酸化チタンとしたチタンゲル群,ウレタン様に処理した試験群の3つについて,10mm×10mm×厚さ2mmサイズの試料でそれぞれ準備し,繊維芽細胞L929およびNIH3T3,および骨芽細胞様細胞MC3T3の計3種の細胞株を適当量となるよう懸濁液として播種し,24時間および48時間,72時間の培養をおこなった。培養時間終了後,採取後に緩衝液で洗浄し,未固定群と固定処理群に分け,未固定群は生死細胞の判別に,固定処理群は正常細胞数の計数と細胞骨格の評価を,それぞれ蛍光色素評価によっておこなった。チタンゲル群およびウレタン化群では有意な死細胞の増大は無く,各処理による細胞生存への為害性は細胞レベルでの評価において差がみられなかった。また,正常細胞数計数により,チタンゲル群およびウレタン化群ではコントロールと比較して48時間以降で2倍以上となる有意な増殖性を確認した。その増殖性はウレタン化群はチタンゲル化群より約20%高かった。仮説として増殖性には細胞骨格の伸展性が影響を与えると考えて評価をおこなったが,100個以上の細胞から計測した細胞骨格面積では各群に有意な差は確認できなかった。 2について,まずは従来作成してきたチタン微粒子多孔体作成物をチタン板材への焼結性を,一体化焼結後に切断面をSEMで確認した。多孔質部および境界面で充分な焼結のネッキングが確認でき,間接引張強さ試験でも多孔質体のみの試料よりも高い強度を示したことから,充分な焼結が出来ていることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
“研究実績の概要”の1.純チタンウレタン化固定法による細胞賦活効果の評価については,予定していたよりも具体的かつ詳細な評価をおこなうことができ,次年度以降で必要となる評価項目について明確に出来る内容であった。これら結果も含め,昨年度内で3件の学会発表報告をおこない,質疑などを通して今後の方向性や発展性に対するを指針を得た。 また,2.チタン基材上へのチタン多孔質部作成によるセミオープン構造焼結体作成方法の確立と評価については,任意形状での焼成や一体化焼結に使用するカーボン材を研究室において形状作成および加工できる環境を整えたことにより,単純で一様な層状の焼結体だけでなく,チタン基材表面に多孔質チタン部にパターン作成するような手法を確立でき,次年度以降の発展性に寄与させられると考えている。また,その焼結性についても,仮説通りに機械的強度に優れ,多孔体表面および内部いずれにおいても充分な加工が出来ていることが確認できている。 このような過程から,チタン多孔性製足場材料としての内部構造の特性を評価する目的で,チタン基材のみの“バルク体”,チタン多孔質体のみの“オープン構造体”,チタン基材と多孔質の一体化焼結体の“セミオープン構造体”として,それぞれの試験試料を作成し,小動物を用いた癒合性評価のための慢性埋入試験を昨年度内より進行中であり,これらについては癒合強度の機械的評価,および周囲組織を含めた切片試料による内部侵入性評価などをおこなう予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の目的として,現在は酸性コラーゲン溶液をウレタン様処理に用いているが,これを血管壁としての癒合性および組織新生を目的とするならば,例えばオステオポンチンなど,有効性の報告があるタンパク製剤を用いておこない,従来の酸性コラーゲンとの比較による有効性を評価,もしくは特定の因子を挙げることを目的としたい。それらの評価はまずin vitroで特異な因子を同定した上で,生体埋入用試験片を作成して小動物の皮下および筋層における生体内埋入試験をおこなう。その結果を踏まえた上で,ウサギや犬などの中型動物の大血管内留置による評価を予定している。 また,各種タンパク製剤を用いた足場材料は組織細胞の接着性には有効であることが確認できているが,細菌類に対しても有効あった場合には,大きな侵襲を伴う開胸術にしようされるデバイスであることを踏まえると,細菌類に対する評価が必要になる。そのため,主に心内膜炎症例に於いて報告のある,黄色ブドウ球菌や連鎖球菌などを用いた対菌性評価をおこなう予定である。 本課題は血管内皮新生を目的とした課題としているが,派生研究として同じく補助人工心臓デバイスを埋め込む際には現状で電気的通電ラインが必須である。その生体内外を繋ぐ皮膚ボタン部位へのチタン多孔性材料の応用も検討している。皮膚ボタン部位は体動によって変位量が大きいため,早期の癒合性は非常に有益である。そのような部位に早期癒合性材料を用いたデバイスを用いれば,感染症のリスクの低減や患者様へのQOLの向上に繋がるため,検討していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
チタン焼結処理のため,新規の真空焼結炉の導入としての備品費を計上していたが,購入希望機器が販売中止となり,価格の面での選定が遅れた事から,次年度以降に見送った。
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次年度使用額の使用計画 |
本来予定していた購入希望機器の代替機器の選定を急ぎ,同等性能かつ同等な価格帯のものを選定後に購入を予定している。
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