研究課題
これまでわれわれは、重度起立性低血圧治療のため、硬膜外カテーテルを用いた人工圧反射装置を開発してきた。これを発展させ、交感神経路のより上位中枢を電気刺激できないかを検討したところ、パーキンソン病治療における深部脳刺激法を用いた方法を着想し、血圧への反応性を確認した。今回、深部脳刺激が起立時の血圧低下を制御可能かどうかの実験的臨床研究を行う。平成30年度は、以下の検討を行った。1) 深部脳刺激を行っているパーキンソン病患者14例(64±12歳、男性7例)で25回の試験を行い、ランダム刺激により血圧反応のあった13回のデータから得られた伝達関数を用い、サーボコントローラーを設計した。ステップ状の血圧低下に対する血圧サーボシステムの振る舞いを比例補償係数Kp、積分補償係数Kiの値を変化させながらシミュレーションし、血圧サーボシステムがもっとも安定的かつ迅速に血圧低下を代償する係数Kp=10、Ki=50で起立負荷などによる動脈圧への外乱は迅速かつ効果的に減弱できることが明らかとなった。2) 視床下核への深部脳刺激を行っているパーキンソン病患者33例(67±8歳、男性18例)で、深部脳刺激onとoffの状態で60度5分間の起立負荷をし、血圧低下度が刺激により10mmHg以上改善するかどうかを検討した。刺激中止による不随意運動や不快な症状により9例を除外し、検討できた24例中、14例で変化なし、8例(36%)で起立時の血圧低下が40±22mmHgから15±27mmHgまで減少した。2例で刺激により血圧低下がより顕著になった。1例は、起立時に血圧が上昇し、その上昇が刺激で抑制された。もう1例は起立による血圧低下が悪化した。起立時間は、変化のない群で40秒から5分で、刺激で変化はなく、血圧低下が減少した群では7例がon/offとも5分間起立可能で、1例だけ2分15秒から5分に改善した。
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