研究課題/領域番号 |
16K01362
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
安藤 由典 九州大学, 大学病院, 特任講師 (80712942)
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研究分担者 |
粂 昭苑 東京工業大学, 生命理工学院, 教授 (70347011)
白木 伸明 東京工業大学, 生命理工学院, 准教授 (70448520)
井藤 彰 九州大学, 工学研究院, 准教授 (60345915)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 細胞移植デバイス / 免疫隔離膜 / バイオ人工臓器 / バイオ人工膵臓 / 糖尿病 / β細胞 |
研究実績の概要 |
アクセスポート付き埋め込み型移植デバイス(AiCTD)の課題を解決し、最適化を行うために、まず(1)デバイスに用いる免疫隔離膜のポアサイズ、(2)デバイス内の細胞の足場材料、もしくはゲル材料の有無、材質、(3)長期使用に耐えられるデバイス構造、サイズ等について設計を行い、評価検討を開始した。 研究計画に基づき、エチレン-ビニルアルコール共重合体製の半透膜の製膜方法の検討を行った後、2種類のポアサイズの異なる膜を作成した。得られた膜について、BSA(牛血清アルブミン)を用いて膜の拡散透過実験を行うことにより、in vitroで膜の性能(ポアサイズ、透過時間等)の評価を実施した。その結果、想定通りBSAサイズ(約6.4nm)を透過可能なポアサイズ、及び透過困難なポアサイズの2種類の膜が作成できていることが明らかとなった。現在、今後の評価に関連する分子サイズの異なる抗体及びインスリン等を用いた拡散透過実験を進めている。 更に、作成した膜を用い、in vivo評価に用いるマウスに移植可能なサイズのAiCTDの試作を行った。試作したAiCTDに関しては、in vitroにおける細胞の評価にも有効に活用できる可能性があることが判明したため、現在、in vitro及びin vivoでの評価に使用するAiCTD(各6個)の作成を進めている段階である。AiCTDの試作に関しては、既存のフィルムを用いた産業用や医療用バッグ等の製造実績がある企業と協議を行った結果、将来的に試作及び製造協力も得られる見込みとなった。 一方、併行して検討しているヒトiPS細胞より作成された膵臓β細胞について、糖の高い濃度に依存してインスリンを分泌することが確認され、安定に作成できるようになってきた。次年度はヒトiPS細胞由来の膵β細胞を用いて、デバイスの評価を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
評価に使用する半透膜の作成に関し、急遽製膜用の設備の移設が必要となり、準備に期間を要してしまったため、膜の作成検討の開始が遅れてしまった。それに伴い、膜評価や膜を用いたデバイス作成検討等、全体的なスケジュールがやや遅れているものの、膜の作成開始後はほぼ予定通り進行している。 一方、併行しているヒトiPS細胞を用いた膵β細胞への成熟化検討は、予定より前倒しして検討を実施しており、デバイスの試作が出来次第、in vitro及びin vivoでの評価を開始する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きサイズの異なるタンパク質等を用いて膜自体の性能評価を継続するとともに、試作したデバイスを用いたin vitroでの性能評価も開始する。また、作成したデバイスについては、強度の検討も行い、強度保持のためのメッシュ支持材の使用等、構造の最適化を図る。併せて、作成したデバイス中に細胞を導入し、in vitro及びin vivoにおいて細胞の機能維持の評価を行い、不織布やゲル等の足場材料や薬剤等を検討することで、長期に細胞が維持可能なデバイス内環境の最適化も検討する予定である。 また、ヒトiPS細胞を用いた膵β細胞への成熟化検討については、引き続きin vitroでの分化誘導条件を検討するとともに、作成したデバイスを用いてin vivoでの成熟化検討、及び誘導された膵β細胞のインスリン分泌機能評価等について検討を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度の研究開始の際、急遽既存設備の移設が必要となり、開始が若干遅れてしまったため、全体の研究スケジュールが後ろにずれてしまった。そのスケジュールの遅れに伴い、経費の使用計画も後ろにずれてしまったため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
膜及びデバイスの作成・評価の期間が後ろにずれてしまったものの、開始後の実施スケジュールはほぼ予定通り進行している。また、併行して実施している細胞の分化誘導検討は予定を前倒しして進行しており、生じた次年度使用額分と次年度分とを合わせて次年度に使用する予定である。
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