研究実績の概要 |
2020年の東京オリンピック・パラリンピックの選手村における使用を想定した、立位でも座位でも測定可能とする完全非接触の感染症・熱中症スクリーニングシステムを開発し、実際に病院等で性能評価をすることを目的としている。 28年度には計測部を頸動脈に当てて呼吸、体温、心拍を測定するポータブル化したシステムを試作し、29年度には病院において臨床試験を行った。システム計測部には呼吸測定用の24GHzの小型ドップラーレーダ、体温測定用の放射温度計、心拍測定のための光電脈波センサを埋め込み、看護師が片手で患者の頸動脈に聴診器状の計測部を当てることにより操作可能とし、本体は肩掛けが可能なように調整した。最終年度となる30年度には本システムを用いて、超高齢者を対象とした介護型の病院で臨床試験を行った。(Journal of Sensor 2018,4371872) 現状では光電脈波を用いているために、計測部を聴診器のように首に当て心拍数を計測するが、内蔵した放射温度計で表面体温、内蔵のレーダで呼吸をモニターするこができ、内科外来で医師が行う診察と同様な項目を10秒程度で確認できるようになった。 本システムが本格的に稼働すれば、感染症の流行の発生をいち早く把握できるほか、検温時に入院患者をモニタリングすることで、重症化へ至る前兆などを把握する事が可能となると期待される。さらに、同様のシステムを用いて高坂クリニックで取得したインフルエンザ患者の呼吸数、心拍数、体温を用いて機械学習を行い、ランダムツリーアルゴリズムを採用した感染症スクリーニングシステムを完成させ、季節性インフルエンザ患者を対象とする試験臨床を行い約96%の感度と特異度を達成し(Journal of Infection 2019, Impact Factor=4.6) 、熟練した医師に肉薄する感染症のスクリーニングが可能となった。
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