研究課題
本研究では、「脳・自律神経機能の関連性解析を用いた若年者の精神安定性の定量的評価」を行うことを目的とした。具体的には、精神安定性に関連した生体反応について、脳機能評価として脳波、自律神経機能評価として心電図と指尖容積脈波を用いることで、次の4点を調べる。第1に、「情動ストレス負荷による脳機能の時間的活動変化」を調べた。第2に、「情動ストレス時の脳機能の空間的情報伝播」を調べる。第3に、「情動ストレス状態における末梢神経機能の変化」を調べた。第4に、これらの「情動に関連した中枢から末梢までの生体反応の多次元的相互関連性を統合的に抽出」する。これらにより、脳・自律神経機能評価の観点から、若年者の情動安定性を客観的に定量化することで、精神疾患の治療や予防に役立てることを可能とした。これまでに、脳機能データの時間的空間的変化を捉える非定常解析手法の開発、および自律神経機能データのゆらぎを捉える非線形解析手法の開発を行った。脳機能活動の経時変化を調べるために、脳波を用いた。脳波による脳機能活動の時間変化および部位間の情報伝播を調べることが可能である。自律神経機能を捉えるために、心電図、指尖容積脈波を用いた。心臓の拍動はゆらぎを有し、心拍変動の周波数解析により、交感神経・副交感神経機能を評価することが可能である。脳中枢神経と末梢神経は、生体機能調整における上位と下位の関係にあり、情動に関連して連動することは分かっている。しかし、生体機能調整の起源となる脳領域の機能が、どの程度低下することで、末梢機能に影響するかなど、定量的関係性ついては十分に分かっていない。そこで、本研究では、情動に関連した脳皮質- 体幹中心部- 末梢の脳・自律神経機能の相互影響性を、関連性解析を用いて、時間的・空間的観点より、統合的に評価を行った。
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