本研究は骨形成細胞およびその他の細胞が分泌するエクソソームがどのように石灰化に関わるかその詳細を明らかにするとともに、細胞がいかにして細胞外環境下で石灰化の調整・制御を行っているか明らかにすることで、細胞による石灰化形成機構の解明を目指すものである。 H28年度は、骨形成細胞などから分泌されるエクソソームを抽出し、それらが骨形成細胞から分泌されている基質小胞と呼ばれる細胞性分泌物の特徴とどのような点で同一であるか検討を行った。また、骨系細胞などの細胞における、細胞外環境の受動的石灰化形成能について検討を行った。 基質小胞の特徴として、表面にアルカリフォスファターゼ(ALP)と呼ばれるタンパク質を持ち、さらに石灰化の核になる能力を有することが挙げられる。骨形成細胞およびその他の細胞から分泌されたエクソソームのALP活性を調べたところ、骨形成細胞のエクソソームのみでALP活性が見られた。さらに、これら細胞のエクソソームの石灰化核形成能を調べたところ、全ての細胞においてエクソソームは石灰化の核となりうることが明らかとなった。この結果は、基質小胞とエクソソームの関係性を知る上で重要な知見であり、エクソソームが石灰化形成に関わることを示唆する。 次に、様々な細胞において受動的な石灰化形成について検討したところ、骨形成細胞であるHOS細胞で非特異的な石灰化が形成された。さらに、骨形成能を持たないガン細胞であるHela細胞でも非特異的な石灰化が形成された。この結果は、生体内では積極的な石灰化形成と受動的な石灰化形成の両方の石灰化が存在することを示唆する。
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