本研究は骨形成細胞およびその他の細胞が分泌するエクソソームがどのようにして石灰化に関わるかその詳細を明らかにするとともに、細胞がいかにして細胞外環境下で石灰化の調整・制御を行っているか明らかにすることで、細胞による石灰化形成機構の解明を目指すものである。 昨年度までの研究で、骨形成細胞とその他の細胞からエクソソームを抽出し、これらエクソソームの生化学的特徴と骨形成能について明らかにした。特に骨形成細胞であるかないかに関わらず、細胞が分泌するエクソソームは石灰化の核となりうることを見出した。また、細胞層における非特異的な石灰化形成について調べたところ、骨肉腫細胞やがん細胞では非特異的な石灰化が生じること、ラット間葉系幹細胞では部分的に非特異的な石灰化が生じること、MC3T3-E1細胞では非特異的な石灰化が生じないことがわかり、細胞によって非特異的な石灰化に対する阻害効果が異なることが明らかとなった。 最終年度である今年度は、ラット間葉系幹細胞による石灰化形成にエクソソームが関与するか検討を行った。ラット間葉系幹細胞は大型の石灰化組織を形成するが、まずその石灰化組織の構造を電子顕微鏡で詳細に観察した。その結果、ラット間葉系幹細胞の石灰化組織はアパタイト主体の層とコラーゲンと石灰化小胞からなる層の二層からなることを見出した。さらにエクソソーム分泌阻害剤を用いて石灰化形成を解析したところ、アパタイト層は形成されていたが、コラーゲンと石灰化小胞からなる石灰化層の形成が抑制されていることがわかった。そのためこの石灰化小胞はエクソソームに由来すると考えられる。一方で、細胞膜を介した石灰化反応を抑制すると、アパタイト層も含めて完全に石灰化形成が阻害されたことから、アパタイト層自体も細胞が直接石灰化形成していることが明らかとなった。
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