研究実績の概要 |
本研究は、近赤外光を用いた脳機能イメージングの評価を行うための、新たなダイナミックファントムを開発し、これまでシミュレーションで確認してきた高密度プローブ配置や画像再構成法について実測に基づいた検証を行うことを目的としている。 30年度は、前年度までの成果を踏まえて、ダイナミックファントムを製作し、複数の間隔のプローブ・ペアを用いて頭皮の血液量変化に起因する誤差を補正する測定法と高密度プローブ配置と画像再構成アルゴリズムを使用することで空間分解能を向上させる測定法の効果についてファントム実験による評価を行った。 一般的な近赤外分光法による脳機能イメージング装置では、2波長光の減光度変化から、酸素化ヘモグロビンと脱酸素化ヘモグロビンの変化を測定値として算出している。本研究で製作したエポキシ樹脂を主材としたファントムでは、酸素化・脱酸素化ヘモグロビンを吸収物質として使用できない。そこで、酸素化ヘモグロビンと脱酸素化ヘモグロビンに吸収スペクトルが近い吸収物質を混入することで、酸素化・脱酸素化ヘモグロビンの変化量を独立して設定できるファントムを製作した。 頭皮の血液量変化に起因する誤差を補正する測定法については、頭皮部分の全体に吸収変化が生じる条件下で大脳皮質の深さに直径20 mmの吸収変化を生じさせた。間隔が30 mmと15 mmのプローブ・ペアで検出された信号の差分をとることによって、大脳皮質中に設定した吸収変化に対応した画像が取得できることが確認できた。高密度プローブ配置を用いる手法については、間隔が15 mm, 33.5 mm, 45 mmのプローブ・ペアを配置し、ファントムの再現性を利用して高密度な測定を実現した。モンテカルロシミュレーションによって推定した空間感度分布を用いて逆問題を解いた結果、大脳皮質の深さに設定した吸収変化の大きさをほぼ正しく再構成することができた。
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