研究課題/領域番号 |
16K01374
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
二井 信行 芝浦工業大学, 工学部, 准教授 (10508378)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 3次元皮膚構造 / 細胞培養デバイス / バリア性 |
研究実績の概要 |
我々は,現在の細胞培養に求められる雰囲気への要求を効率的に緩和するという問題に対し,生体においてバリア,ガス交換,抗菌などの機能をもつ皮膚に注目した.昨年度は,創薬やアレルギー感作試験等に用いられる市販の3次元皮膚モデルを細胞培養用の小型デバイスの表面に組み込んだが,今年度は完成した皮膚モデルのかわりに,ヒト表皮ケラチノサイトをデバイスの表面に播種し,3次元皮膚構造を構築し,そのバリア性を検討することとした.デバイスとして,市販の3次元皮膚モデルと類似のカップ状構造をもつプラスチック製のチップを作成し,カップの隔壁をなすメンブレン上でケラチノサイトを培養する方式と,点字デバイスを取り付けることで培地を灌流させられるシリコーン(PDMS)製マイクロ流路の天井の一部をメンブレンとしたものを作成し,その上でケラチノサイトを培養する方式の2種類を検討した. カップ状構造をもつプラスチック製のチップ上でケラチノサイトの培養ならびに3次元構造形成を行ったケースについては,カップ状構造の上に湿度センサを配置し,水分蒸散量(TEWL)を計測することで,バリア性を評価した.1週間の培養において水分蒸散量は上昇した.カップ状構造の内外の培地量のバランス,培地のpHや溶存物質に問題があるとみられる.マイクロ流路内でケラチノサイトの培養ならびに角層への分化促進を行ったケースについては,経皮抵抗(TEER) 値を計測することで,バリア性を評価した.その結果,流路内でケラチノサイトの培養を 10 日間行うことができた.その間,TEER 値の上昇,角層を促し始めてからの上昇を確認でき,デバイスのマイクロ流路内でケラチノサイトの培養,角層形成がなされているとみられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は,ケラチノサイトの培養と3次元皮膚への分化,細胞培養デバイス上でのケラチノサイトの培養とバリア性の検証の方法を確立したが,以上の技術の確立とそれを用いた実験に時間を要し,外部への発表にまで至らなかった,やや遅れているとした.
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今後の研究の推進方策 |
ここまで,ケラチノサイトの培養,3次元皮膚のデバイス上での構築,細胞の生存とバリア性の検証法の開発を並行してすすめてきたが,それぞれが困難な課題をもたらし,進捗に影響した.今後は,表皮をもつデバイスの完成を直接目指すより,その実現可能性を示すデータの蓄積につとめたい.具体的には,ケラチノサイトを容易に3次元培養でき,バリア性などの検証が容易で,それでいてデバイスに構築されたのと同様の状況を再現できる実験系を構築したい.また,ケラチノサイトを培養した培地中の抗菌ペプチドとサイトカインの分析ができる系を開発し,デバイス上培養を想定した条件で分析をすすめたいと考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
ケラチノサイトを培養した培地の成分の分析を行うところまでの進捗がなく,試薬等を注文しなかったためである.最終年度の本来の予算と合わせ,当該分析のための支出の一部としたい.
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