研究課題/領域番号 |
16K01374
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
二井 信行 芝浦工業大学, 工学部, 准教授 (10508378)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ケラチノサイト / 抗菌ペプチド / アプタマー / 等速電気泳動 |
研究実績の概要 |
我々は,現在の細胞培養に求められる雰囲気への要求を効率的に緩和するという問題に対し,生体においてバリア,ガス交換,抗菌などの機能をもつ皮膚に注目した. 初年度は,創薬やアレルギー感作試験等に用いられる市販の3次元皮膚モデルを細胞培養用の小型デバイスの表面に組み込んだ.その問題点として,市販のモデルが高価であること,モデルは細胞培養用のウェルインサートに形成されていて,ウェルインサートをデバイスに組み込むのが想定以上に煩雑であったこと,そして,皮膚モデルの維持と共培養を両立する条件が十分に得られないという問題があった,そこで,2年目は完成した皮膚モデルのかわりに,ヒト表皮ケラチノサイトをデバイスの表面に播種し,3次元皮膚構造を構築することを試みたが,デバイス上でのケラチノサイトからの皮膚構造の構築は1年目に直面した問題にも増して困難であった. そこで,従来の方針を変更し,ケラチノサイトがもつ恒常性をもたらす因子として,ケラチノサイトの自然免疫への寄与,なかでも抗菌ペプチドの分泌に注目することとした.そこで,代表的な抗菌ペプチドであるLL-37を高感度で検出する方法として,アプタマーと結合せさせた状態のLL-37を等速電気泳動にて分離し,アプタマーをqPCRで増幅して検出することとした.これまでに,LL-37に結合したアプタマーを,等速電気泳動を用いて非結合のアプタマーと分離できることを明らかにした.また,アプタマーを良好に増幅できることも確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
昨年度いっぱいは,国外留学にて,別の研究テーマと並行して,遺伝子増幅と等速電気泳動などの分析技術を学びつつ本研究を実施した.その結果,抗菌ペプチドLL-37のアプタマーを用いた分離ならびにアプタマーのqPCRによる定量法を確立することができた.しかし,培地に微量に含まれるLL-37への応用ならびにケラチノサイトを含む細胞を扱うことは時間・設備の都合でできなかった.そこで,事業期間を1年延長し,今後1年間で,再び皮膚構造を用いて共培養評価の再試行と系内の培地の分析を並行して行う方針である.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,LL-37をスパイクした培地を微量(1-10uLのオーダー)とり,そこから,等速電気泳動ならびにアプタマーの増幅によりLL-37を定量する方法を確立させる.これと並行して,マイクロ流体デバイス内でケラチノサイトと内皮細胞との長期灌流共培養系を構築する.長期培養中に培地を微量サンプルし,これまでに確立させた方法によりケラチノサイトから分泌されるLL-37の検出を試みるとともに,その後,共培養系に細菌やエンドトキシンを混入させ,ケラチノサイトの抗菌効果を確認するとともに,その抗菌効果と培地中のLL-37の濃度との関係を明らかにする.
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