皮膚は,細胞からなる組織のうち,最も外界に接している部分であり,現状の細胞培養とは異なる,温度も変化し,無菌性もない環境から内部の細胞を守るはたらきをもっている.我々は,その皮膚組織をなす細胞であるケラチノサイトの機能に,細胞培養に恒常性をもたらすものとして注目してきた.まず,ケラチノサイトの機能であるバリア作用を細胞培養と共存させるため,ウェルインサートに形成した3次元皮膚構造を組み込んだ細胞培養デバイスを製作し,3次元皮膚構造に対する追加の湿潤と追加のガスバリアを行うことで,他種細胞との共培養を可能とした.ここで,3次元皮膚構造を外界に露出しても雑菌の汚染がなかったことから,ケラチノサイトによる自然免疫を細胞培養にて機能させらる可能性に新たに着目し,細胞培養中にその機能を測定する方法の確立,具体的には,ケラチノサイトが放出する抗菌ペプチドLL37を,細胞培養デバイスからサンプルした培地から簡便かつなるべく連続的に検出できる方法を検討した. そこで,シリコーン製のオープン流路内に移動度の異なる電解質含むアガロースゲルのセグメントを形成し,数10μlのサンプルを短時間で安定して過渡的等速電気泳動できるシステムを開発した.そして,LL37を含むサンプルに,LL37のアプタマー配列を含む1本鎖DNAを加えて泳動することで,DNA単体とDNA-LL37複合体を濃縮したうえで,さらに分離して,2本のバンドにすることができた.そして,そのバンドの輝度比を評価することで,LL-37の濃度を簡便にモニタリングできる可能性が示された.
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