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2017 年度 実施状況報告書

脳律動性活動による聴覚情報処理過程の検討と聴覚機能の他覚的検査法への応用

研究課題

研究課題/領域番号 16K01376
研究機関東京電機大学

研究代表者

田中 慶太  東京電機大学, 理工学部, 准教授 (10366403)

研究分担者 原島 恒夫  筑波大学, 人間系, 教授 (70262219)
小渕 千絵  国際医療福祉大学, 保健医療学部, 准教授 (30348099)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード生体情報・計測 / 聴覚検査
研究実績の概要

聴力を評価する聴覚検査には,成人の選別聴力検査(自覚的)が広く普及しているが,一方で新生児聴覚スクリーニング検査に代表される他覚的検査方法は,未だに一般に普及しているとは言い難く,簡易で正確な検査方法が求められている.本研究では簡易に計測できる律動的聴覚野の脳反応(聴性定常応答:ASSR)を利用して,正確で安全な聴覚検査システムへの展開を目指す.
本年度は,聞き取りの困難さの検査法である両耳分離聴検査時における脳磁図を計測した.両耳分離聴検査とは,両耳に異なる検査語(言語音,数字など)を呈示して,検査者は両耳から聞こえた検査後を再生する自覚的及び行動学的検査方法である.ここでは他覚的に調べるため,呈示した言語音を左右異なる周波数で振幅変調し,両耳に呈示することで,左右の変調周波数に応じたASSRを誘発させて,左右どちらからの耳から呈示された検査音に対する脳活動を調べた.両耳分離聴タスクで呈示する刺激音は,48種類の二音節の言語音(アカ,イヌなど)をそれぞれ35Hzと45Hzに振幅変調したものを使用した.実験はActiveとPassive条件で実験を行った.Active条件では,実験中に左右から知覚した言語音を無音区間で記入するように指示し各耳の正答率を求めた.Passive条件では,実験中に無音で字幕なしの映像を呈示した.
行動実験の結果,左耳に比べて右耳の正答率が有意に高く,先行研究と同様に右耳優位が示された.脳磁図によるASSRの振幅は,Passive条件に比べてActive条件で統計的に有意に大きかった.このことから40Hz成分のASSRは,聴覚情報の認知処理との関連を示唆する.また右耳優位のグループにおいて,右耳に対するASSRの振幅が有意に大きかった.これらの結果より両耳分離聴における右耳優位に対する神経生理学的な関連を40Hz成分のASSRにより明確にできることを示唆する.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

概ね申請した内容に記載した内容と予想される結果に沿って研究が進展しているが,難聴者の脳は計測が課題である.研究の進捗状況は,研究の分担者と月一回の成果報告を行っている.

今後の研究の推進方策

聞き取りの困難さの検査法である両耳分離聴検査時における脳磁図を引き続き計測する.ヒトは一般に右耳優位であることが知られている.そこで,両耳分離聴検査の脳磁図の結果を参照して,ヒトがどちらの耳のどのくらいの割合で,右耳の言語を聞き取ったのか,行動実験と脳磁図の結果の整合性を評価する.それにより,ヒトがなぜ右耳に注意を払うのかが明らかになると思われる.具体的には,一般に聞き取りの右耳優位性は,左半球に言語野が存在するため,その対測である右耳の聞き取りが優位となる(対測優位性)と言われているが,現在注意機能による関連も報告されている.そのため両耳分離聴検査での注意多動性障害との関連も示唆される.もし他覚的評価による聞き取りの定量的評価が可能となるならば,これらの疾患の診断の一指標となることが示唆される.

次年度使用額が生じた理由

(理由)研究装置(脳磁界計測装置)の使用料と被験者アルバイト費用を計上していたが,当該施設との共同研究として,研究を遂行し無料になったたため,次年度に繰り越した.
(使用計画)成果報告(学会発表や論文投稿費)として計上する.

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2018 2017 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件) 図書 (1件)

  • [国際共同研究] Rotman Research Institute(カナダ)

    • 国名
      カナダ
    • 外国機関名
      Rotman Research Institute
  • [雑誌論文] Neural representation of octave illusion in the human cortex revealed with functional magnetic resonance imaging2018

    • 著者名/発表者名
      Tanaka Keita、Kurasaki Hiroki、Kuriki Shinya
    • 雑誌名

      Hearing research

      巻: 359 ページ: 85~90

    • DOI

      10.1016/j.heares.2018.01.001

    • 査読あり
  • [学会発表] 両耳分離聴タスクにおける聴覚情報処理の検討2017

    • 著者名/発表者名
      田中慶太
    • 学会等名
      第47回日本臨床神経生理学会学術大会
  • [学会発表] 情動が聴覚野の律動性活動に及ぼす影響2017

    • 著者名/発表者名
      小林実樹哉,田中慶太
    • 学会等名
      平成29年電気学会C部門大会
  • [学会発表] 言語音による両耳分離聴タスク時における聴覚情報処理2017

    • 著者名/発表者名
      高橋悠太,田中慶太,原島恒夫,小渕千絵
    • 学会等名
      平成29年電気学会C部門大会
  • [学会発表] 周波数タグ付けによるオクターブ錯聴時の聴覚情報処理2017

    • 著者名/発表者名
      正慶宗一郎,倉崎大樹,田中慶太,栗城眞也
    • 学会等名
      平成29年電気学会C部門大会
  • [学会発表] 安静時fMRIによる脳の機能的結合の検討2017

    • 著者名/発表者名
      加藤優一,栗城眞也,田中慶太
    • 学会等名
      平成29年電気学会C部門大会
  • [図書] 生理心理学と精神生理学 第Ⅰ巻 基礎2017

    • 著者名/発表者名
      堀 忠雄、尾崎 久記、坂田 省吾、山田 冨美雄
    • 総ページ数
      320
    • 出版者
      北大路書房
    • ISBN
      4762829722

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公開日: 2018-12-17  

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