当初の計画の①~③について研究を実施し、下記の実績を得た。 ①従来電極と微小針電極法(MNG)による筋交感神経活動(MSNA)の同時計測実験と解析:H29年度の研究結果から、電極間隔等の仕様変更の必要性が示唆された。これを踏まえ、H30年度は最外径や間隔、材質の異なるLaplacian電極を複数設計・製作し、MSNAの検出可能性を実験的に検証した。結果、最外径9.0mm、間隔0.9mm、材質Ag/AgClの電極において、最も再現性が高かった。腓骨神経・脛骨神経を対象とした実験で、3名の被験者全員でMSNAに類似した波形を得た。また、3名中2名では神経走行に沿って設置した2電極からの出力波形が、同様な発火パターンを示した。 ②超低入力容量アンプIC を用いた新能動電極の設計と製作:H29年度に引き続き、入力容量をキャンセル可能な非反転増幅回路型の完全差動初段回路について、改良に取り組んだ。まず、ブートストラップ技術を導入し、初段回路の入力インピーダンスを高上した。帰還部にコンデンサを使用し、直流(低周波)に対する入力インピーダンスを低く抑えた。また、入力インピーダンス増加に伴う商用電源雑音の混入を抑えるため、driven right leg(DRL)回路を導入した。DRL回路の出力は電極表面から生体へ帰還するのが一般的であるが、電極裏面にもドライブすることで圧着バンド等からの商用電源雑音の混入を抑制できることを見出した。 ③グラフェン製 Laplacian 型電極の製作:H29年度に獲得したLaplacain電極表面へグラフェンを転写する方法を用いることで、再現性高く転写が行えることをラマン分光光度計により確認した。特に、polymethyl-methacrylate クロロベンゼンの濃度が転写の成否に強く影響を与えることを見出した。
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