全体を通じて,電圧値から安定的なひずみ値を出すための高感度調整技術の確立,多点同時計測の実現とそれを処理可能な回路の試作,柔軟変形物に貼付できるひずみセンサと評価用冶具システムの試作,計測データの可視化と機械学習を行った. 最終年度では,まずその前年度に試作した評価用冶具システムを用いて得たデータを解析した.なお,CAE解析ソフトウェアを用いて皮膚センサを貼ったプラスチック基材の弾性解析を行い,評価対象として理想的なひずみ分布データが得られていることを確認した.解析の結果,皮膚センサは,その伸長方向または縮小方向に依存した電圧変化経路を辿るヒステリシスを持つことを発見した.このことは電圧情報だけでは曲率を一意に決定ができないことを意味し,そのままでは電動義手の動作と対応付けが困難となる課題が判明した.すなわち,得られた知見を基に綿密なデータ解析を行うことが喫緊の課題となりその課題解決が重要と判断し,当初計画を変更して新たな義手の製作を見送った. 上記課題の対策として複数のセンサ出力電圧の時間変化を基に曲率計算し,各曲率半径が作り出す曲線同士の曲線近似を用いれば,個々のセンサが持つヒステリシスの影響を軽減することができると考えた.そこで,計測制御装置と制御系設計ツールを用いて,皮膚センサ信号に基づく形状変形の可視化を行った.その結果は,肩関節のような複雑な部位でも高度な曲線近似が実現できれば,これを新たな特徴量として機械学習を行うための定量的な入力情報を付与できることを示した. 最後に,複数の皮膚センサ信号と教師データの間のニューラルネットワークによる機械学習を行った.学習の結果,比較的高い正答率が得られたため,特徴量抽出を適正な入力情報と学習パラメータ調整次第では複数の皮膚センサ信号を同時に用いた義手の操作が可能であることが示された.
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