研究課題/領域番号 |
16K01381
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研究機関 | 横浜薬科大学 |
研究代表者 |
弓田 長彦 横浜薬科大学, 薬学部, 教授 (40191481)
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研究分担者 |
岩瀬 由未子 横浜薬科大学, 薬学部, 講師 (00521882)
梅村 晋一郎 東北大学, 医工学研究科, 教授 (20402787)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 超音波 / 薬剤修飾カーボンナノチューブ / ナノ粒子 / 音響化学活性 |
研究実績の概要 |
がんの発生部位には、皮膚等の体表面と人体の深部にある肺、肝臓等の臓器がある。従来の治療法、外科手術、化学的治療、放射線治療等の、問題点を克服するためは、薬剤をがん細胞のみにピンポイントで送達し、腫瘍部位のみに選択的に薬効を発揮させる技術の開発が必要である。本研究では、DDS 単独の技術的な限界を克服することを目的に、生体での深部到達性に優れる外部エネルギーである超音波と音響化学的に抗腫瘍活性化するナノ微粒子さらにはドラッグデリバリーシステム(DDS)を組み合わせた新たな治療システムの開発を行うことを目的とする。ナノ粒子として薬剤修飾がん指向性多機能型カーボンナノチューブを用いることで、患部において超音波と薬剤修飾カーボンナノチューブによるキャビテーションバブルを生成・破壊さらには、カーボンナノチューブの音響化学的抗腫瘍活性化作用を用いることにより、これまで困難であった腫瘍組織選択的ターゲッティングを目指すものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
培養細胞を用いた薬剤修飾カーボンナノチューブの音響化学活性の評価 最初に、超音波単独、またはカーボンナノチューブとの併用による抗腫瘍効果を、培養細胞でした。超音波と併用することにより殺細胞効果が発現、または増強される薬剤修飾カーボンナノチューブのスクリ-ニングを行った。殺細胞効果の判定は、細胞膜の色素透過能に基づくトリパンブルー排除法とミトコンドリア内の酵素活性に基づくXTT アッセイ法によって行った。ポリエチレングリコールで修飾したカーボンナノチューブに音響増感活性が認められた。さらに活性酸素種に特異的な消去剤であるヒスチジン、トリプトファンによる 阻害効果が認められたことより殺細胞作用における活性酸素の寄与が確認された。次にcolon26腫瘍を移植した動物に、これらの微粒子を投与し、微粒子が腫瘍組織において治療効果が得られる濃度に達した時点で患部に超音波照射を行い微粒子の音響化学的活性化による抗腫瘍効果の発現を確認した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、最初に音響化学的抗腫瘍効果に関与する活性酸素種の同定を行う。電子スピン共鳴(ESR)で水溶性フラーレン誘導体の懸濁液に超音波を照射したときのOHラジカル, ス-パ-オキサイドラジカル、一重項酸素などの活性酸素種の産生を測定する。この方法では、それぞれの活性酸素種により安定なニトロオキサイドラジカルになるスピントラップ剤を含む空気飽和緩衝液に超音波を照射し、活性酸素種の生成を確認する。さらに活性酸素種に特異的なスカベンジャ-による阻害効果によりそれら寄与を確認する。次に薬剤修飾カーボンナノチューブの腫瘍集積性の薬物速度論的解析を行う。 がん組織にある新生血管は正常組織の血管に比べて物質透過性が高いため、分子サイズの大きな高分子化合物ががん組織に透過・移行する効果が知られており、粒子のサイズをコントロールすることで腫瘍へ集積できると考えられる。固形腫瘍を移植した動物にカーボンナノチューブを投与し、経時的に血液中粒子量と腫瘍及び正常組織中粒子量を測定し、腫瘍への集積性を薬物速度論的に解析する.また、音響科学作用によるアポトーシス誘導に関しても検討を行う。アポトーシスの誘導は形態変化、DNAのラダー形成の電気泳動による検出、カスパーゼ3の活性化などにより行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究成果整理用文具の購入を行ったが、請求書が商品到着ごとに分割されてしまい、使用予定金額がずれたため、請求書を1通にまとめる依頼をしたが、期日までに届かなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
請求書到着後、支払い手続きを完了した。
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