研究課題/領域番号 |
16K01384
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
矢田 豊隆 川崎医科大学, 医学部, 講師 (00210279)
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研究分担者 |
小笠原 康夫 川崎医療福祉大学, 医療技術学部, 教授 (10152365)
仲本 博 川崎医科大学, 医学部, 助教 (10299183)
佐々木 環 川崎医科大学, 医学部, 教授 (30187124)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 冠微小血管 / 心筋虚血 / 内皮依存性過分極 / 過酸化水素 / 一酸化窒素 |
研究実績の概要 |
心筋虚血モデルのH2O2とNO産生ルート評価及び血管拡張薬による血流改善評価 (1) EDH/H2O2産生ルート評価:心筋内心内・外膜側摘出血管を採取し、ELISAでCu,Zn-SOD、H2O2、caveolin-1濃度を定量比較した。Cu,Zn-SODは、正常群と糖尿病群の間で有意差を認めなかった。H2O2は、正常群に比べ糖尿病群で減弱した。eNOSは、正常群の非虚血部に比べて、糖尿病群の虚血部において低下を認めた。心外膜側冠動脈に比べ、心筋内微小血管におけるcaveolin-1は、有意に高かった。しかし、正常群と糖尿病群の間で有意差を認めなかった。また、Cu,Zn-SOD以外のルートからのH2O2産生を介した血管拡張を除外するためNADPH阻害薬(apocynin)、Lipoxygenase阻害薬(nordihydroguaiaretic acid)、xanthine oxidase阻害薬(allopurinol)、mitochondrial electron transport chain阻害薬(rotenone)投与前後の血管拡張反応の比較を行い、Cu,Zn-SOD以外のルートからのH2O2が血管拡張に関与するか否かを明らかにした。各H2O2阻害薬投与前後のEDHを介した血管拡張反応は、正常群と比較して有意な変化を認められず、血管拡張に関与しなかった。
(2)血管拡張薬による血流改善評価:虚血後側副血行路の血流改善のため、血管内皮機能改善薬 ARB(olmesartan)の投与群と非投与群の比較。 ARB(olmesartan)の投与群と非投与群でブラジキニンを介した血管拡張反応を評価したところ、細動脈で血管拡張を認め、H2O2の産生増加を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)平成29年度、EDH/H2O2産生ルート評価として、心筋内Cu,Zn-SODは、正常群と糖尿病群の間で有意差を認めず、H2O2産生源として、正常群と糖尿病群の間で差がないことがわかった。平成28年度の糖尿病性虚血側副血行路において、NOの作用する小動脈において血管拡張作用は、正常群に比べ有意に低下したが、EDHの作用する細動脈において、残存血管拡張作用を認めた。糖尿病群の虚血部において、心筋内eNOSの低下を認めた、心筋内H2O2は、正常群に比べ糖尿病群で減弱するも残存していた。平成28年度の血管拡張反応と同様の結果を支持するものと思われた。心外膜側冠動脈に比べ、心筋内微小血管においてcaveolin-1は、有意に高く、EDHに関与する微小血管において、caveolin-1が多く分布することが窺われた。 Cu,Zn-SOD以外のH2O2産生ルートを各々の阻害薬(NADPH阻害薬、Lipoxygenase阻害薬、Xanthine oxidase阻害薬、Mitochondrial electron transport chain阻害薬)を用いて、H2O2拡張効果を比較したが、H2O2拡張には、関与せず、Cu,Zn-SOD由来のH2O2血管拡張効果を示すことが明らかとなった。 (2)血管拡張薬による血流改善評価:虚血後側副血行路の血流改善のため、ARB(olmesartan)の投与群と非投与群でブラジキニンを介した血管拡張反応を評価したところ、ARB投与群において細動脈の血管拡張およびH2O2の産生増加を認め、ARBの作用の中に、EDH/H2O2を介した作用が含まれることが窺われた。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、同顕微鏡による糖尿病性心筋虚血時の心内膜側微小血管の観察評価とカテーテル型NOセンサ及びELISAによる冠静脈洞NO濃度の評価を行う。 (1)虚血心内膜側微小血管の蛍光顕微鏡による観察:同蛍光顕微鏡により、正常犬群と糖尿病犬群の虚血モデルを対象に虚血(20秒間反応性充血、LAD狭窄)前後に心内膜側微小血管の観察評価を行う。心内・外膜側冠微小血管にブラジキニンを投与し、EDH阻害薬を段階的阻害後、両血管のEDHによる拡張能の違いを評価する。 (2)カテーテル型NOセンサ及びELISAによる冠静脈洞NO濃度の定量的評価 両群の虚血前後にブラジキニンを投与し、NOによる血流改善効果の評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
3月後半に消耗品の購入が遅れたため、次年度使用額が生じた。次年度使用額は、30年度交付額と合わせ消耗品などに使用する予定。
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