研究実績の概要 |
平成28年度は、心筋修復を目的として種々の脱細胞化組織の作製とその条件検討を行った。研究用ブタの心臓から心筋、足から骨格筋、大動脈から平滑筋を採取し、高静水圧法および界面活性剤による脱細胞化を行った。処理条件として、高静水圧の印可圧力(600, 800, 980 MPa)、昇圧速度(65, 98, 196 MPa/min)、処理温度(10, 30 ℃)、処理時間(10, 20, 30 min)と界面活性剤(ドデシル硫酸ナトリウム(SDS), ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(TritonX-100))の濃度(0.1, 0.5, 1.0%)、処理時間(6, 12, 24 hr)を系統的に組合せた。高圧脱細胞化処理後の組織をヘマトキシリン・エオジン染色および残存DNA定量により評価したところ、種々の条件による細胞除去に顕著な差は認められなかった。しかし、昇圧速度に依存して組織構造の変化が観察された。一方、界面活性剤処理組織では、低濃度では部分的に細胞残渣が観察され、高濃度では細胞除去が達成されるものの、顕著な組織構造破壊が認められた。以上の結果に基づき、脱細胞化法として高静水圧法を用いることとした。次に、作製した脱細胞化組織の加工について乾式カッティングミルを用いて検討した。刃の回転速度、時間を変化させることで組織のマイクロサイズ化を試みた。得られた組織を走査型電子顕微鏡にて観察した結果、素材となる組織に依存して得られる組織形状が異なることが明らかとなり、平滑筋は繊維状、心筋および骨格筋は平板状であることが分かった。
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