本研究は、環状ペプチドの自己組織化を制御することで親疎水パターン化表面をもつナノチューブを作製し、ナノチューブと細胞およびタンパク質との相互作用解析により親疎水パターン化表面ナノチューブの機能を明らかにすることをねらいとする。親疎水ナノパターン化表面の設計に当たり、本研究ではD体とL体のアミノ酸が交互に並んだ環状ペプチドが、一次元方向に連なって形成するペプチドナノチューブに着目した。このナノチューブは。水素結合ネットワーク形成を駆動力として環状ペプチドが集合化することで形成し、構成アミノ酸の側鎖官能基がペプチドナノチューブの外側表面に位置するという特徴をもつ。この特徴を生かして、分子設計された環状ペプチドの集合プロセス(分子の積み重なり方)を制御することができれば、表面官能基の配置の厳密制御が可能であると考えた。環状ペプチドの積み重なり方を制御するための機序として、側鎖のグアニジウム基とカルボキシル基との間で塩橋を形成するL-アルギニン (L-Arg) およびL-グルタミン酸 (L-Glu) の導入を検討することにした。以上を踏まえて、L-ArgとL-Gluに加えて D-ロイシン(D-Leu) およびL-システイン (L-Cys) を含む環状ペプチド (CP1) を設計した。既報を参考にして、α-カルボキシル基がアリル基により保護されたFmoc-グルタミン酸の2-クロロトリチルクロリド樹脂への固定化、ペプチド鎖の伸長、アリル基の脱保護、樹脂上での環化、側鎖保護基の脱保護および切り出しを経てCP1を得る合成ルートについて検討した。
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