研究課題/領域番号 |
16K01391
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
和久 友則 京都工芸繊維大学, 分子化学系, 助教 (30548699)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ペプチド / 自己組織化 / ナノ会合体 / ドラッグデリバリーシステム |
研究実績の概要 |
昨年度は、疎水性アミノ酸ロイシンとシステインが交互に配列した8残基の環状ペプチド (具体的な配列はcycle-[(L-Glu)-(D-Cys)-(L-Leu)-(D-Cys)-(L-Arg)-(D-Cys)-(L-Lue)-(D-Cys)-]) と末端にマレイミド基をもつオリゴエチレングリコール (OEG、8 mer) との反応によりCP-(EG8)4(環状ペプチド1分子当たり4分子のOEGを導入) を合成し、その自己組織化挙動を調べた。今年度は、環状ペプチド1分子当たりOEG が2分子導入されたCP-(EG8)2を、cycle-[(L-Glu)-(D-Cys)-(L-Cys)-(D-Cys)-(L-Arg)-(D-Cys)-(L-Cys)-(D-Cys)-])とOEGとの反応により合成するとともにその自己組織化挙動を調べた。1,4-ジオキサン / 水 / ジメチルスルホキシドの混合溶媒中にCP-(EG8)2を溶解し、40℃で24時間静置した際に形成する会合体を透過型電子顕微鏡により評価した。その結果、1,4-ジオキサン含率の高いときに、CP-(EG8)4と同様の線維状会合体を形成することが認められた。次に、会合体の生理的条件下での安定性を調べたところ、水中では線維状形態を維持することができず、球状会合体を形成することがわかった。次に、これらのナノ会合体が細胞により取り込まれるかどうかを調査した。蛍光標識化したナノ会合体を37℃で30分間、JAWSII細胞に作用させた。この細胞を共焦点レーザー顕微鏡により観察したところ、細胞質全体より蛍光シグナルが確認されたことより、CP-(EG8)2およびCP-(EG8)4会合体の細胞内取り込みを確認した。しかし、会合体を作用させていない細胞と比較すると、蛍光シグナル強度の増加は僅かであり、取り込み効率は低いことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
親水基と疎水基の交互配列からなる環状ペプチドを構成成分とするナノ会合体を作製し、その細胞との相互作用を評価するという当初の目標に対する基礎的な検討は実施したが、当初狙いとしていた一次元ナノ会合体 (線維型もしくはナノチューブ型の会合体) と細胞との相互作用については評価できていない。また、抗原ペプチドのデリバリーキャリアとしての応用についても未検討である。
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今後の研究の推進方策 |
上述の通り、計画していた実験に関する基礎的な検討は実施したが、当初狙いとしていた一次元ナノ会合体 (線維型もしくはナノチューブ型の会合体) と細胞との相互作用については評価できていない。CP-(EG8)2およびCP-(EG8)4はともに有機溶媒を含む混合溶媒中では、線維型の構造体を形成するが、これらの水中での安定性が低いことが原因である。今後は、OEG鎖を短くすることや、ペプチド全体の疎水性を高めることで、水中でも安定な一次元ナノ会合体を作製する。これが実現できれば、抗原ペプチドなどの生理活性のあるペプチドのキャリアとしての応用についても検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初目的としていた実験が未完了であることおよび論文投稿に向けた実験を行う必要があるため。次年度の予算はこれらの実験に関わる物品費に主に使用する予定である。
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