昨年度は、2種類の環状ペプチド (cycle-[(L-Glu)-(D-Cys)-(L-Leu)-(D-Cys)-(L-Arg)-(D-Cys)-(L-Lue)-(D-Cys)-](CP1)およびcycle-[(L-Glu)-(D-Cys)-(L-Cys)-(D-Cys)-(L-Arg)-(D-Cys)-(L-Cys)-(D-Cys)-](CP2)) のシステイン残基の側鎖にオリゴエチレングリコール (EG、8 mer) を導入したCP1-(EG8)4およびCP2-(EG8)2を合成し、その自己組織化挙動を調べた。その結果、CP1-(EG8)4およびCP2-(EG8)2は水/有機溶媒混合溶媒系において、線維状の会合体を形成することがわかった。しかし、これらの会合体は水中では球状へと変化し、形態を維持することができなかった。本研究では、環状ペプチドが線維軸方向に規則正しく連なることを利用して、親水性基および疎水性基がそれぞれ整列したナノパターン化表面をもつ会合体を作製することを目的としている。そこで、本年度は水中での安定性の高い線維状会合体を作製するために、オリゴエチレングリコールの鎖長の短い環状ペプチドを新たに合成し、その自己組織化挙動について検討した。具体的には、上述と同様の手法により、CP1およびCP2ペプチドにオリゴエチレングリコール(3mer)を導入したCP1-(EG3)4およびCP2-(EG3)2を合成し、これらの混合溶媒系における会合体形成について調べた。しかしながら、当初の予想に反して、これらのペプチドは混合溶媒系において不定形な凝集物を形成するのみであり、線維状の会合体を形成しなかった。これは、オリゴエチレングリコール鎖長が短いと混合溶媒への親和性が下がることが原因であると考えられる。今後は、水中での安定性を高めるために、ロイシンをより嵩高い側鎖をもつイソロイシンに置換した環状ペプチドを骨格に用いて同様の検討を行う予定である。
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