抗癌剤であるタキソールを、配糖化したタキソール配糖体を創製した。合成には化学的な合成に加えて、酵素を用いたオリゴサッカライド合成反応を使用した。ジクロロメタン中で、TESClを使用して、タキソールの2'位のヒドロキシ基をトリエチルシリル基で保護した。グルコースを付加したグリコール酸に、トリエチルシリル化したタキソールを、EDCI/DMAPにより縮合させて、配糖化したタキソールを合成した。この配糖化したタキソールからのトリエチルシリル基、および、グルコースのヒドロキシ基を保護しているベンジル基の除去には、触媒的水素添加法を用いた。次に、配糖化したタキソールの単糖部分に、グルコースをさらに結合させた、タキソールのオリゴサッカライド配糖体を合成した。タキソールの単糖配糖体に、生体触媒としてシクロデキストリングルカノトランスフェラーゼを使用して、さらに、糖供与体として水溶性寒天を添加して、24時間インキュベーションする事により、酵素反応生成物を得た。反応生成物には、タキソールのオリゴ糖配糖体が含まれていることが分かった。次に、比較的短い糖鎖を持つタキソール配糖体を高収率で得る為、グルコシダーゼを使用するオリゴ糖配糖体の加水分解を行い、タキソールのマルトトリオシド配糖体を合成した。ヒトB型肝炎ウイルス(HBV)のLタンパク質を出芽酵母で発現させたところ、出芽酵母細胞の小胞体由来の脂質二重膜構造を持つリポソームに、Lタンパク質が組み込まれ、自己凝集することにより、直径100nm程度の中空のナノ粒子(バイオナノカプセル)を形成した。ヒトB型肝炎ウイルス(HBV)のLタンパク質を粒子表面に持つバイオナノカプセルは、肝細胞への集積性を持つ。この特性を利用して、タキソール配糖体を、バイオナノカプセルに封入し、抗癌試験を行ったところ、NuE細胞に対して、高い細胞致死活性を示した。
|