研究課題/領域番号 |
16K01393
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
中村 博亮 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (60227931)
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研究分担者 |
上村 卓也 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 病院講師 (10597321)
高松 聖仁 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 客員准教授 (30295688)
岡田 充弘 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 講師 (40309571)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 人工神経 / ドラッグデリバリーシステム / 成長因子 / 末梢神経 / 再生医療 / iPS細胞 |
研究実績の概要 |
本研究では、人工神経を足場として成長因子(SDF-1とFGF)の二重徐放ドラッグデリリーシステム(DDS)を構築し、内因性の神経修復細胞の動員を促すことで神経再生を促進させる新しい治療方法を開発する。これまで我々はiPS細胞由来神経前駆細胞を付加した人工神経による末梢神経再生を行ってきた。一方、DDSの発展とともに外部からの細胞移植だけではなく、内因性の細胞本来の自然治癒力を高めて組織再生を行うアプローチが再注目されている。しかし末梢神経の再生医療において、内因性に神経修復細胞(シュワン細胞や修復マクロファージ)の動員を促し神経再生を促進する試みは未だなされていない。内因性の本来の神経再生力を増幅した治療方法が確立されれば、我々がこれまでに開発した外的な細胞(iPS細胞由来神経前駆細胞)移植治療と組み合わせることで、内部外部の両者から神経再生促進を目指した理想的な再生医療となる。 まずSDF-1とFGFの両者を含有させたゼラチンハイドロゲルを人工神経に充填し、マウス体内における人工神経からの二重徐放効果を確認する(Dual-release人工神経の完成)。次にマウス坐骨神経損傷モデルに対してSDF-1/FGF Dual-release人工神経を用いて神経再生を行い、神経再生の促進効果とそのメカニズム(内因性シュワン細胞の動員)を解明する。最後に、これまで我々が報告してきた外的な細胞移植(iPS細胞由来神経前駆細胞)とこれら内因性神経修復細胞の動員を促すSDF-1/FGF Dual-release人工神経を組み合わせて、マウス坐骨神経損傷モデルに対して神経再生を行い、下肢機能回復や再生軸索数に関して従来法の自家神経移植と比較検討を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SDF-1とFGFの2種類の成長因子をゼラチンハイドロゲルに吸着させることが可能であった。これらの成長因子を含有したゼラチンハイドロゲルを人工神経に充填することで、これまでに人工神経を足場としたSDF-1とFGFの二重徐放(Dual-release)ドラッグデリバリーシステムを構築した。 6週齢のマウス(C57BL6)の左坐骨神経に長さ5mmの神経欠損を作製し、広範囲坐骨神経損傷モデルを作製した。以下の群-1)人工神経単独、2)SDF-1付加人工神経、3)FGF付加人工神経、4)SDF-1/FGF二重付加人工神経、5)自家神経移植で移植再建を行った。付加する成長因子は人工神経1本当たりSDF-1は500ng、FGFは10μgとした。術後12週におけるマウスの下肢運動機能は、自家神経移植群についでSDF-1/FGF二重付加人工神経群で回復を示した。また坐骨神経の神経伝導速度および組織学的な神経再生も同様に、自家神経移植群についてSDF-1/FGF二重付加人工神経群で大きい結果であった。 マウス坐骨神経損傷モデルに対して、SDF-1/FGF Dual-release人工神経を用いることで神経再生が促進した。SDF-1/FGF 二重徐放による神経再生促進メカニズムについて現在検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
SDF-1/FGF二重徐放による神経再生促進メカニズムについて検討する。具体的には、移植後3, 7, 21日目に人工神経を回収し、TNFα, IL-6(ともに炎症性M1マクロファージのマーカー)やTGFβ1, IL-10(ともに修復性M1M2マクロファージのマーカー)の遺伝子発現をReal time RT-PCRで調査する。 iPS細胞由来神経前駆細胞が生着した人工神経に、ゼラチンハイドロゲルを用いて成長因子(SDF-1とFGF)の二重付加を行う。6週齢のマウス(C57BL6)の左坐骨神経に長さ5mmの神経欠損を作製し、以下の群-1)人工神経単独、2)iPS細胞移植を併用した人工神経、3)SDF-1/FGF Dual-release人工神経、4)iPS細胞移植を併用したSDF-1/FGF Dual release人工神経、5)自家神経移植で移植再建を行う。術後12週でマウスの下肢運動機能回復について比較検討する。また筋電計を用いて再生神経の神経伝導速度を測定する。神経再生について組織学的に評価するために、術後12週で人工神経もしくは移植自家神経を採取し、中央部横断切片を用いて抗neurofilament protein抗体による免疫染色を行い、再生軸索数をカウントする。これによりiPS細胞移植を併用したSDF-1/FGF Dual release人工神経が、自家神経移植の神経再生を凌駕できるか検証できる。
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