研究代表者らが、開発した剛直で異方性の高い構造を持つカチオン性の人工タンパク質 CCPC 140は、既知のCPPと比べ100-1000倍にも達する優れた細胞内薬物送達活性を有する。しかしながらCPPと異なり、その立体構造依存的な細胞透過活性が原因で、タンパク質の細胞内デリバリーにおいて、CCPC 140-標的タンパク質からなる融合タンパク質の発現に、立体障害の問題が残る。平成30年度は、前年度に引き続き単量体で高いビオチン結合能を持つストレプトアビジン変異体をリンカー配列を介して融合した、CCPC 140-mSAの再設計および、CCOC 140の細胞透過メカニズムの解明に向けた研究を進めた。CCPC 140-融合タンパク質のフォールディング障害に置ける問題の一つに、CCPC 140が二本鎖平行coiled-coil構造を形成していることが挙げられる。そのため、分子設計を白紙から行うこととした。まず、Protein Data Bank から1本鎖逆平行coiled-coil構造を形成する分子を探索した。次に、これらのタンパク質のうち、coiled-coil構造の全長が9 nmを超えるものを選んだ。これは、前年度までの本研究成果から得られた高い細胞透過活性を示すのに必要な分子長が 9 nmであったことからこのように設定した。そして、分子表面がカチオン性になるように分子設計を施した人工遺伝子を合成、発現し、機能評価を進めた。残念ながら、高い細胞透過能に重要な37℃での構造安定性に欠いたため、分子の再設計を進めている。また、CCPC 140の細胞透過メカニズムの解明に向けたBioID法による網羅的な相互作用タンパク質の探索を試みた。
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