研究課題/領域番号 |
16K01396
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
豊田 恵利子 東海大学, 医学部, 特定研究員 (90749269)
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研究分担者 |
佐藤 正人 東海大学, 医学部, 教授 (10056335)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | iPS細胞 / 軟骨再生 / 細胞シート |
研究実績の概要 |
自家軟骨細胞シート移植による関節治療法は、変形性膝関節症を有す患者を対象とした臨床研究において、これまで難しかった硝子軟骨による修復と安全性が確認されており、優れた治療法であることが示されている。本研究は、iPS細胞から誘導した硝子軟骨様組織を成人膝軟骨の代替組織として用いることにより同種軟骨細胞ソースとして応用することを目標としている。そのため、iPS細胞から誘導した軟骨様組織と、これまでに用いられてきた生体由来の軟骨組織から作製した細胞シートの特性および機能の同等性を検討した。昨年度は、4種のiPS細胞由来軟骨組織から細胞シートを作製して特性を解析し成人膝軟骨細胞シートと比較した、iPS細胞由来軟骨様組織から作製した軟骨細胞シートは、多層化した細胞シート構造を示し、構成する細胞数や表面マーカーの発現、組織染色、TGFβの産生量は同様であったが、melanoma inhibitory activityの産生量が劣る傾向を示した。 iPS細胞由来軟骨様組織の特性が、iPS細胞樹立条件やドナーなどの条件により異なるケースがあることが推定されたため、臨床に使用できるiPS細胞軟骨様組織を用いた検討を改めて実施することとなった。 H29年度は、臨床用のHLAホモ接合体ドナー由来の軟骨様組織の提供をうけるための契約手続きをすすめ、軟骨様組織を受領した。受領した臨床用試料よりあらためて細胞ストックの作製を行った。現在、細胞シートの作製と特性解析を実施中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
臨床で使用可能な株そのものを用いた評価の重要性が示唆されたことから、臨床用株由来の研究試料を用いて研究を進める必要があった。臨床用株の授受の手続き・契約成立に双方の施設の倫理委員会での承認など、時間がかかったためその間は解析を中断していた。 現在は授受手続きが完了し11月に新たな試料が提供され、研究を再開している。
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今後の研究の推進方策 |
研究用iPS細胞由来軟骨様組織から、従来法で作製したiPS細胞由来軟骨細胞シートはMIAの産生量など、生体軟骨組織由来の細胞シートとは異なる点も認められている。現在、臨床用株由来のiPS細胞由来軟骨組織が入手できたため、再度細胞シート特性の解析を実施中である。臨床用株由来の細胞シートで、このような差異が解消されるのであれば問題ないが、解消されないようであれば生体内における有効性に影響がある可能性があり、細胞ストック作製条件や、細胞シートの培養条件などの最適化が必要な可能性がある。簡便にin vitroで軟骨細胞シートの有効性を予測が可能なin vitroの実験系を構築中である。上記、in vitro実験系を用いて臨床使用可能な細胞シートの特性確認、培養条件の最適化を進め、異種同所性移植モデルにおける細胞シートの軟骨修復作用の評価を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
臨床使用株そのものでの解析が重要であったが、臨床用iPS細胞株由来の試料の授受にはあらたな各種委員会の承認や契約手続きが必要であった。研究試料の授受が可能になるまで研究を中断していた時期があったため、予定していた解析を今年度に繰り越している。H30年度は、臨床用iPS細胞ストックから作製した軟骨様組織について、細胞シートの特性評価と培養条件の最適化を実施し、有効性が期待できる特性を示す細胞シートの作製条件を決定したのち、異種同所性移植モデルによる軟骨修復効果の評価を実施する計画である。
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