研究課題/領域番号 |
16K01397
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
高島 由季 東京薬科大学, 薬学部, 准教授 (70236214)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 網膜色素上皮細胞 / モノクロ―ナル抗体 |
研究実績の概要 |
本年度は、網膜指向型の内在化モノクロ―ナル抗体の探索及び作製を目的として以下の検討を行った。ラット網膜色素上皮細胞(RPE細胞)をマウスに免疫し、単離した脾臓細胞とミエローマ細胞を融合してハイブリドーマを作製した。これにジフテリア毒素と抗体結合ドメインの融合タンパク質を添加し、数日後に細胞生存するハイブリドーマを回収し培養を継続し、さらに限界希釈を行い、モノクロ―ナル抗体のみを産生するハイブリドーマを選定した。大量培養後の培地を試料として分泌されるモノクロ―ナル抗体のアイソタイプを同定した。また、ラット由来及びヒト由来のRPE細胞を用いてフローサイトメトリーで解析した結果、得られたモノクロ―ナル抗体はラット種のみに特異的に作用することを確認した。作製したモノクロ―ナル抗体にジフテリア毒素と抗体結合ドメインの融合タンパク質を混合し、これを異なる濃度でラットRPEへ添加し、37℃、5%CO2条件下でインキュベーションした後、WST-1 assayにより細胞毒性を測定した。その結果、抗体添加量の増大に伴い細胞生存率は低下し、50%細胞傷害濃度(IC50)が約0.07μg/mLであることを確認した。さらに、ヒトRPE細胞と比べ、ラットRPEでのみジフテリア毒素による細胞毒性が観察されたことから、作製したモノクロ―ナル抗体は、ラットRPEに特異的に結合し内在化することが示された。網膜への薬物・核酸送達の指向性向上への寄与が期待できる網膜標的化モノクロ―ナル抗体が作製されたことから、今後RPE細胞への取り込み特性及び薬物送達キャリアへの修飾への適用について検討を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ハイブリドーマからラットRPEに特異的なモノクロ―ナル抗体の選定・大量培養に長期間を有するが、現時点では今後の検討に期待できる抗体の選定ができたと考えている。しかしながら、今後ナノキャリアへの修飾に必要なモノクロ―ナル抗体の大量生成に想定以上に時間を要しており(数か月)、改善策を講じる必要があると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、作製したラット網膜指向型のモノクローナル抗体を修飾したリポソームの調製を試み、ラット及びヒトRPE細胞における内在化能ならびに細胞障害性等を評価し、網膜を標的とするナノキャリアの構築を目指す。具体的には、これまでに核酸送達に有用であることを明らかとしている独自の機能性ペプチドとsiRNAの複合体ナノ粒子を搭載するリポソームを作製し、この表面に本研究で得られたモノクロ―ナル抗体を化学的に修飾する。この調製条件をはじめに検討し、確立する。さらに、調製したモノクロ―ナル抗体修飾リポソームについて、粒子径、ゼータ電位などの物性評価、RPE細胞へトランスフェクションした際の細胞内取り込み効率の評価を行う。期待する網膜特異性が認められた場合には、ラットへの点眼を実施し、眼組織切片の蛍光顕微鏡等により、点眼後のモノクロ―ナル抗体修飾リポソームの眼内挙動を観察し、生体における網膜指向性を確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究遂行にあたり、モノクロ―ナル抗体の大量生成を継続的に行うにあたり、次年度にまたがり必要な培養試薬等の物品購入を連続的に行う必要があったため、一部次年度使用額が生じている。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度分と併せて、引き続きモノクロ―ナル抗体の作製を行い、さらにリポソームへ修飾するために必要な消耗物品費用に使用する予定である。
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