1μm粒子のHeLa細胞への内在化経路において、クラスリン依存エンドサイトーシスの可能性を調査した。毒性の高い表面電荷が正の粒子、および生体適合性の高いPEG化粒子ともに、クラスリン依存エンドサイトーシスによる内在化は無かった。以前の結果とまとめると、表面電荷が正の粒子は、膜を物理的に貫く経路とファゴサイトーシスで内在化され、マクロピノサイトーシス、カベオラ依存エンドサイトーシス、クラスリン依存エンドサイトーシスでは、内在化されず、PEG化粒子は、マクロピノサイトーシスとファゴサイトーシスで内在化され、膜を物理的に貫く経路、カベオラ依存エンドサイトーシス、クラスリン依存エンドサイトーシスでは、内在化されないことが明らかになった。また、細胞表面に静電吸着する表面電荷が正の粒子に比べ、PEG化粒子の内在化数は少なかった。PEG化により細胞膜との相互作用を低下させた粒子は、低毒性である一方、細胞に内在化されにくくなることが示された。 表面電荷が正の粒子の細胞膜損傷機構も明らかにした。内在化された粒子の表面に細胞膜が吸着していることが、膜染色剤を用いた多光子励起顕微鏡の観察で明らかになった。細胞の表面に静電吸着した粒子が、細胞膜に包まれつつ、細胞内に移行するモデルを考えた。表面電荷が正の粒子が、細胞膜を奪いながら内在化されるので、細胞膜が損傷することが分かった。 多光子励起顕微鏡を用いた高感度な膜損傷アッセイの結果から、ポリアルギニンは、細胞膜の脂質分子の配向を乱すものの、LHDアッセイにおいては、その他のポリカチオンと比べ、膜損傷性が非常に低いことが分かった。ポリアルギニンは、細胞膜に吸着するが、膜損傷性が低い材料であることが示唆されたため、ポリアルギニンで粒子を被覆すれば、膜損傷性は低くかつ、細胞へ多く内在化される粒子が得られることが期待され、今後も研究を継続する。
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