研究課題/領域番号 |
16K01400
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
平野 義明 関西大学, 化学生命工学部, 教授 (80247874)
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研究分担者 |
大槻 周平 大阪医科大学, 医学部, 講師 (20589840)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 細胞集合体 / 足場 / ペプチドハイドロゲル / 自己組織化 / RGDS / 軟骨細胞 / 半月板 / 分化誘導 |
研究実績の概要 |
今年度は「細胞集合体埋入ペプチドハイドロゲル足場のin vivo 評価」を中心に研究を遂行した。具体的には、軟骨・骨芽細胞集合体や幹細胞(hMSC)細胞集合体をペプチドハイドロゲル内に埋入後、ウサギの軟骨および半月板損傷モデルに移植して、細胞集合体からの3 次元組織への構築挙動を解析する。その際、ハイドロゲルのみやハイドロゲルに細胞集合体誘導ペプチドを添加した場合について、動物組織からの細胞遊走についても観察する。さらには、組織再生挙動や細胞の増殖・分化やハイドロゲルの分解挙動を組織学的に解析する。動物実験における軟骨損傷モデルや半月板損傷モデルについては、実験手技が確立している大阪医科大学整形外科で実施した。 先ずは、ペプチドハイドロゲルの毒性試験を行ったところ、細胞毒性等は認められなかった。次に、ペプチドと生理食塩水の混合によって調整したハイドロゲルのみを半月板損傷モデルに埋入し組織再生能力を検討した。その結果、ハイドロゲルの力学的特性が弱いため、体液等で溶出してしまい組織の再生が全く観られないことが分かった。そこで、ゲル化の手法を詳細に検討したところ、ゲル化溶媒としてPBSの濃度を制御してゲルを形成させることで、これまでの生理食塩水を用いて作成したゲルより力学物性が約5倍程度高くなるゲルの作製方法を見出した。このゲルのみを半月板に損傷モデルに埋入したところ、約8週間で半月板組織が再生できていることが分かった。 以上の結果から、ゲルの強度が半月板再生に影響をおよぼしていることが明らかになった。さらには幹細胞がなくても半月板が再生できる可能性を示唆する結果となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の最終目標は、軟骨や骨再生や骨移植への組織工学的な指針を示すことである。 今年度の研究では、目標であるハイドロゲルのみを注入することによる半月板再生が、動物実験において達成出来た。当初は、hMSCによる半月板再生の相乗的効果を期待していたが、前述の結果より集合体を埋入する必要がなくなった。これより、小さな欠損であればhMSCは必要ないが、欠損のサイズによってはhMSCの細胞集合体が必要となると推察できる。 ハイドロゲルとhMSCの両者を用いた半月板再生に関しては、次年度に実施する予定である。 以上のように、当初の計画通り実験を遂行し概ね良好な結果が得られた。また、次年度以降の研究の課題も明らかになった。よって概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
ハイドロゲルのみで半月板の損傷が再生できるか、損傷の度合いや大きさなどを詳細に検討する必要がある。また、損傷の度合いが大きい場合や再生能力が弱い場合には、hMSCなどの細胞集合体を同時に埋入することにより再生の促進の度合いを評価する必要がある。 ハイドロゲルとhMSCの両者を用いた半月板再生に関しては、次年度以降に詳細に検討する必要がある。また、適応範囲についても検討が必要である。
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次年度使用額が生じた理由 |
最終年度に予定していた、半月板再生のin vivo実験において、組織再生挙動や細胞の増殖・分化やハイドロゲルの分解挙動の組織学的な解析に時間を要したため。また、追加実験として長期埋入in vivo実験の解析を行うため、その経費を次年度繰越金とする。加えて、本内容を海外での学会にて発表する予定であるため。
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