研究課題/領域番号 |
16K01401
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
古薗 勉 近畿大学, 生物理工学部, 教授 (30332406)
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研究分担者 |
東 慶直 近畿大学, 生物理工学部, 教授 (90333509)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ハイドロキシアパタイト / フッ素 / アナフィラキシー / 抗菌性 |
研究実績の概要 |
これまで、我が国では1990年代にカテーテル感染により引き起こされたアナフィラキシーショックにより、抗菌性カテーテルの使用が忌避されてきた。近年、抗菌剤(ミノサイクリンとリファンピシン)を含浸した中心静脈カテーテルが海外より輸入・販売されているが、抗菌剤による耐性菌発現の恐れによりかなり限定された使用基準となっている。そこで当該研究課題では、カテーテル感染の完全制圧を目指して、アナフィラキシーを惹起させることなく、また耐性菌発現の恐れのある抗菌剤を使わない、微弱な抗菌性を有する新規なナノ材料および高分子複合体を創出する。具体的には、Fイオンをドープした分散性と結晶性が高く、微弱な抗菌性を有しアナフィラキシー様反応を回避するF置換ハイドロキシアパタイト(F-HAp)ナノ粒子を開発し、新規な抗感染性カテーテル創出のための基盤技術を確立する。本年度(第2年目)における課題は、①F含有率の異なるF-HApナノ粒子の調製および材料特性の評価、②高分子基材表面へのF-HApナノ粒子コーティング、③F-HApのアナフィラキシー反応評価を実施した。①融着防止法を用いて、3種類のFイオン含有率の異なるF-HApナノ粒子を合成した。電極法にてF含有率を測定したところ、F含有率はそれぞれ、24%,52%、85%であり、仕込に対して80-100%置換されていた。②アニオン製ポリマーをグラフト重合した高分子シートに、ノーマルHApナノ粒子を単層コーティングし、さらにF-HApナノ粒子をコーティングすることによって、複合化が可能となった。③酵素結合免疫吸着法を用いてFナノ粒子のアナフィラキシー様反応試験を実施した。その結果、ヒスタミン放出濃度がネガティブコントロールである肥満細胞のみと同程度であったことから、当該ナノ粒子はアナフィラキシー様反応を引き起こしにくい材料であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度(第1年目)の研究課題は、「分散性と結晶性に優れるF-HApナノ粒子の合成」および「アナフィラキシー様反応評価法の検討」の2点であった。前者については、フッ素イオン導入率を制御した単結晶の合成法を確立し、それぞれのナノ粒子についてキャラクタリゼーションを終了した。また後者については、酵素法および酵素結合免疫吸着法の2点について材料をターゲットとしたアナフィラキシー様反応を検討し、評価法確立に向けて目処を立てることができた。平成28年度(第2年目)においては、「F含有率の異なるF-HApナノ粒子の調製および材料特性の評価」、「分子基材表面へのF-HApナノ粒子コーティング」、および「F-HApのアナフィラキシー反応評価」を行った。これらの研究計画も予定通り実施することができた。以上のことから、今年度の研究課題はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
第3年目では、次の3つの課題を実施する予定である(①Fイオン放出挙動の評価、②病原性微生物を用いた抗菌試験、③動物細胞の接着性・増殖評価)。これらの結果を総合して、微弱な抗菌性を有する新規なカテーテルコーティング用ナノ材料の創出とプロトタイプ作製を行う。
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