本年度は昨年度作成した腎線維化モデルにおけるL-FABPの変動を長期的に観察した。片側尿管閉塞ー再開通モデル(UUO-riverse 4週間)モデルを2頭(Cat 1&2)、UUO-reverse 8週間モデルを1頭(Cat 3)の計3頭作成した。 8週間モデルでは、8週目に右腎を摘出後BUN、Cre、SDMA及び尿中L-型脂肪酸結合タンパク(L-FABP)は高値を示した。ネコは乏尿を呈し一般状態が悪化したため3日後に安楽処分とした。腎組織検査では尿細管間質の線維化、炎症細胞の浸潤が顕著に認められた。 4週間モデルでは、Cat 1& 2共に右腎摘出後BUN、Cre、SDMAは一時的に高値を示したもののその後は参照値範囲内へ復した。Cat 1は428日にCre値が上昇し始め、現在IRISステージ3で推移している。尿中L-FABP値は術後57日より3μg/g Cre前後を推移し344日 、即ちCre及びSDMA上昇の約100日前に12.4μg/g Creと高値を呈した。Cat 2は現在IRISステージ1のまま推移しており、尿中L-FABP値は1μg/g Cre前後と低値で安定している。両動物ともに腎組織検査ではHE、マッソントリクローム、αSMA染色において尿細管間質の線維化が確認されている。 また、68頭のネコにおいてL-FABP値、Cre値、SDMA値についてそれらの相関性についても検討した。Log L-FABPはLog Cre及びBUNとは強い相関が認められなかった。一方で、SDMAを測定した49頭のネコではLog L-FABPとLog SDMA間に強い相関性が認められた。 尿中L-FABPは既存の腎機能評価マーカーよりもより早期に腎の病態生理学的変化を予測できる可能性が示唆された。
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