研究課題/領域番号 |
16K01405
|
研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
武居 秀行 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 加速器工学部, 主任研究員(任常) (20645452)
|
研究分担者 |
櫻井 英幸 筑波大学, 医学医療系, 教授 (50235222)
榮 武二 筑波大学, 医学医療系, 教授 (60162278)
磯辺 智範 筑波大学, 医学医療系, 教授 (70383643)
渡邉 祐介 北里大学, 医療衛生学部, 助教 (90582742)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 線量分布再構成 / CT画像上の線量計算 / 線量計算効率化 / 精度検証 / 3次元線量分布表示 |
研究実績の概要 |
本研究は、放射線治療中の患者を通過したX線をElectronic Portal Imaging Device (EPID) により画像化し、その画像をもとに患者体内の線量をモニタリングするシステムの開発をテーマとしている。 平成29年度は、システムにCT画像を取り込んで線量計算させる機能を追加し、精度検証を行った。線量計算の効率化のため、CT画像上の不必要な部分のボクセルを自動的に除外する機能を作成し、計算速度がおよそ2倍に向上した。精度検証は、算人体の肺を再現したファントム(002LFC thorax phantom, CIRS)に治療用X線を照射してEPID画像を取得した。システムに取り込んだファントムのCT画像を密度情報に変換し、線量計算を行った。ファントム内の線量分布は、線量測定用フィルム(EBT3, Ashland)で測定し、計算値と比較した。線量分布は軟部組織で2%以内、肺の内部で5%以内の精度で測定値と一致した。肺で線量の差が大きくなったのは、フィルムの自己吸収によって実際の線量よりも測定値が高くなったことが原因として考えられる。 患者体内の3次元線量分布を表示する機能を追加し、線量分布を視覚的に確認することが可能となった。 平成29年度までに得られた成果は、2017年10月にイタリアで開催された国際学会「International Conference on Monte Carlo Techniques for Medical Applications (MCMA2017)」で発表を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の平成29年度以降の計画は、(1)患者の位置ずれの再現、(2)治療時の線量分布が治療計画からずれた場合の線量差の表示および線量分布データでの出力である。 (1)について、一般的に治療時に想定される6方向(頭尾、左右、腹背)の位置ずれをシステム内に再現した。線量計算は時間を要するため、平成30年度に計算と解析が終了する見込みである。 (2)について、システム内に保有している線量分布情報を、外部ソフトウェアからの読み取りが可能な形式で出力する機能を作成した。システムにも3次元線量分布を表示する機能を追加し、線量分布を視覚的に確認することが可能となった。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で、水などの均一な物質だけでなく、肺のような不均質な組織に対しても精度検証を行い、臨床的に問題となるような投与線量の誤差をモニターするには十分な精度があることが分かった。不要な計算領域を除外することで、計算速度が向上した。今後は、より高い精度と速度向上を目指し、ボクセルサイズの変更や物理過程の選定を含めた計算環境の最適化を行う。 実際の治療では、患者の設置誤差や体動がある。治療時の位置誤差を3 mmと想定し、システム内で頭尾、左右、腹背の6方向それぞれについて位置ずれを再現した。全ての方向において線量計算が終了した後解析を行う。位置ずれに対するEPID画像への影響を調べ、実際に位置ずれが起きた場合のEPID画像をファントムを用いて取得し、比較する。線量分布の妥当性を検証するため、ファントムを用いた測定および治療計画装置から得られた線量分布との比較を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 前年度に購入した測定用フィルムを使用したため、新たに購入する必要がなかった。 (計画) 平成30年度も測定を計画しているため、測定用フィルムを追加で購入する。
|