研究課題
臨床検体を用いて、脂肪肝およびNASHの診断と発癌に関わる音響分析を包括的に行った。脂肪酸組成は、NASH群では単純性脂肪肝群に比べてC18:0とC22:6n3が高値でC18:1n9cは低値であった。またC20:4n6は、肝線維化の進展に伴って漸増した。NASH群において脂肪化の程度別で比較すると、脂肪化高度例ではC20:4n6、C20:5n3、C22:6n3が低下し、C18:1n9cが上昇していた。NASH群では単純性脂肪肝群に比べて組織インピーダンス値が有意に低値であった(1.76 ± 0.007 vs. 1.84 ± 0.02, p=0.011)。なお、C18:0、C20:4n6、C20:5n3、C22:6n3単体でのインピーダンスは基準より有意に低値であり、NASH肝組織における音響特性(低Inp)の要因であることが示唆された。一方、音速(m/s)は単純性脂肪肝/NASH群(1573.2±22.4)ではコントロール群(1634.3±47.3)に比べて有意に低値で(p<0.01)、線維化進行例において低下傾向を呈した。発癌については、非発癌例(1.63)に比べて発癌例(1.68)が、また、高分化群(1.64)に比べて中分化群(1.69)が、非腫瘍部における組織インピーダンス値が高い傾向にあり、発癌や癌悪性度との関連があるものと考えられた。以上より、脂肪酸の音響特性と組成が、脂肪肝での高インピーダンス所見とNASHでの低インピーダンス所見を説明しうるものと考えられた。そして、低インピーダンスかつ低音速パターンがNASHを強く示唆する音響所見で、非腫瘍部肝組織における高インピーダンスは、発癌や癌悪性度に関連する因子であると考えられた。これらの成績は過去に報告のないものであり、NASH診療において極めて有用な手法を提案することができた。
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Clin Mol Hepatol
巻: - ページ: -
10.3350/cmh.2018.1013.