研究課題/領域番号 |
16K01408
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
篠原 修二 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任助教 (10325897)
|
研究分担者 |
光吉 俊二 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任准教授 (30570262)
中村 光晃 東京大学, 医学部附属病院, 特任助教 (30772975)
徳野 慎一 東京大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (40508339)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 音声病態分析 / 大うつ病 / パーキンソン病 / 希死念慮 |
研究実績の概要 |
本年度は、平成29年10月11日から10月15日にかけてルーマニアを訪問し、ブラショフのトランシルバニア大学とピテシティ大学を訪問し、実験の協力要請、実験打ち合わせを行った。その後、新たに平成30年3月トランシルバニア大学で81名の音声収集、およびうつ度を測定する自記式アンケートであるBeck Depression Inventory(BDI)を実施した。これで平成28年度に収集したピテシティ大学での110人分のデータを合わせて約200名分のデータを取得できた。
平成28年度にピテシティ大学で収集したデータに関して、PST株式会社で開発済みのMind Monitoring System (MIMOSYS)の音声指標である元気圧と申請者が発明した音声指標であるピッチ検出率(特許出願済み)を用いて解析を行った。その結果、自記式アンケートで測定される被験者の自殺願望と各音声指標の間に有意な関係がみられた。 新たな音声指標の開発に関して、大うつ病の指標となるMajor Depression Voice Index(MDVI)とパーキンソン病の指標となるParkinson’s Disease Voice Index (PDVI)を開発した。今後大規模な検証は必要ではあるが、MDVIとPDVIを用いて、日本人の大うつ病患者とパーキンソン病患者、および健常者を精度よく識別できることが明らかになった。これらの成果はいくつかの国際会議で発表済みである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究実施計画では、平成29年度にルーマニアで音声収集を実施し、平成30年度にデータ解析、新たな音声指標の開発、検証を行う予定であった。当初の予定は順調に達成された。データ収集に関しては、ピテシティ大学の約110名のデータだけでなく、トランシルバニア大学で81名のデータを追加することができた。検証に関しては、MIMOSYSの音声指標である元気度、およびピッチ検出率を用いて自殺願望の強い人をスクリーニングできる可能性が開けてきた。またMDVIとPDVIを用いて、パーキンソン患者や大うつ患者をスクリーニングできる可能性も示唆された。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き多言語音声の収集を進めていく。特に外国語のうつ病患者の音声を収集したい。今年度開発したMDVIとPDVIの検証は日本人を対象にしか行われていない。今後は多言語に関して検証していきたい。 音声指標は言語間だけでなく、同一言語内でもフレーズによって敏感に値が変動する。今後はMDVIやPDVIの言語依存性だけでなく、フレーズ依存性も検証し改良することでロバストな音声指標に改良していきたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由として、まずルーマニアでの音声取得実験が、現地の研究者やリサーチアシスタントの助力により順調に進んだため、当初予定より出張回数が少なく済んだことが挙げられる。また、他の研究資金と目的が重複する出張があったため、旅費が節約できたという理由も挙げられる。今年は海外でのより多くの音声取得実験と、論文誌投稿、国際会議での発表を進める予定である。
|