研究課題
近年の心不全治療の進歩はめざましく、アンジオテンシン変換酵素阻害剤やβ遮断薬などの内科的薬物療法、植込み型除細動器やペースメーカーを使用した心臓再同期療法などのデバイス治療、在宅酸素療法や順応性自動制御換気などの呼吸補助療法、さらには心室補助装置の改良や究極的には心臓移植により心不全患者の予後は劇的に改善してきている。他方で、これらの濃厚で包括的な心不全治療をすべての心不全患者に行うことは、医療資源的にも医療経済的にも困難であり、その意味で個々の心不全患者のリスク層別化をおこない、見積もられたリスクに応じて、医療費や医療資源を効果的に投入することが求められている。近年“前負荷増大負荷心エコー図検査”が有望な負荷検査として知られるようになってきた。下肢陽圧負荷によってもたらされる静脈還流量の増加は、心不全の病態生理を考慮した場合、極めて合理的かつ病態生理に忠実に準拠した心負荷検査と考えることができる。しかしながら、これまで前負荷増大に対する左室予備能評価は全くなされておらず、したがって前負荷増大に対する左室予備能と予後との関係は現在のところ明らかになっていなかった。この度我々は120名の収縮能の低下した心不全患者と20名の正常者を対象に下肢陽圧負荷エコー検査を行い、心不全例ではFrank-Starling機序が破綻し、前負荷予備能が有意に低下していることが判明した。さらに心不全群を二群に分け、前負荷予備能が保たれているものとそうでないものに分け、予後を検討した。結果、前負荷予備能が認められない心不全群では、他群に比較し、有意に予後が悪いことも同時に判明した。つまり、今回我々が用いた下肢陽圧負荷法は、心不全患者の予後層別化に有用であることが証明された。
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Circ Cardiovasc Imaging
巻: May;11(5) ページ: 1-12
10.1161/CIRCIMAGING.117.007160.