研究課題/領域番号 |
16K01411
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
大竹 義人 奈良先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 准教授 (80349563)
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研究分担者 |
高尾 正樹 大阪大学, 医学系研究科, 寄付講座講師 (30528253)
横田 太 奈良先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 助教 (60759900)
菅野 伸彦 大阪大学, 医学系研究科, 寄附講座教授 (70273620)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 筋線維モデリング / 医用画像解析 / 生体シミュレーション / 線維走行統計モデル |
研究実績の概要 |
本年度は(1)線維走行のGold standardデータの構築、および(2)線維走行推定アルゴリズムの開発を進めた。 (1)人体の連続切片標本を写真撮影して構築された、高解像度カラー三次元画像データセット(Ajou Universityが公開しているVisible Korean Humanデータセット。ボクセルサイズ:0.1×0.1×0.1 mm)をもとに、筋線維走行のGold standardデータの構築を行った。本年度は、大殿筋・中殿筋の二つの筋肉を対象とした(来年度以降、対象筋肉を増やす予定)。まず、同データセットに含まれるそれぞれの筋肉領域を手動で抽出したマスク画像を用いて画像から一つの筋肉を取り出し、領域内の各ボクセルについて、周辺領域(Volume of Interest。ここでは5ボクセル四方)に対して構造テンソル解析を行う事で、筋線維構造の局所での方向成分を抽出した。ここで得られたテンソル場に対し、脳の拡散テンソル画像(Diffusion Tensor Imaging)で行われているトラクトグラフィー(tractography)手法を適用し、連続した線維走行を抽出した。整形外科医の目視による確認と、文献的に知られている筋線維走行との比較により、妥当な結果が得られている事を確認した。 (2)筋肉組織周辺のコントラストが低く、ノイズの多い臨床用CT画像から、筋線維走行の推定を行うアルゴリズムを提案し、検証および改良を行った。これまで提案された従来法では、筋肉表面の形状と付着部の位置のみを用いて、起始と停止を滑らかに結ぶベクトル場を求める事で、筋線維の走行に近い流れを推定していたが、提案手法ではこれを初期値として用い、さらに筋肉内部の輝度値分布から得られるテンソル場にフィットするベクトル場を求める最適化問題として定式化し、実装した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画であった、Gold standardデータの構築、および線維走行推定アルゴリズムの開発、の二項目について、予定通りに進める事ができ、国際学会(The 16th Annual Meeting of the International Society for Computer Assisted Orthopedic Surgery)にて予備実験の結果を発表する事が出来たため、「おおむね順調に進展している」と評価した。アルゴリズムについては、次年度以降に実際のCT画像データベースや遺体のデータを用いた評価・検証実験の結果に基づき、より安定に動作するように改良を進める必要があると考えているが、当初予定していた問題の定式化、および初期実装については順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、遺体の解剖実験から得られるデータをもとにアルゴリズムの評価を行うと共に、既に構築済みの実際の患者CT画像データベースを用いて検証を行う予定である。遺体の解剖実験では、臨床用CTよりも高い被ばく量に設定し、高画質(高輝度値コントラストおよび高空間分解能)なCT画像を取得可能であるため、股関節周辺の骨盤や大腿骨など、高密度な骨組織の影響によるアーチファクトの少ない画像を得られることが期待でき、患者を撮影した臨床用CTよりも理想に近い画像を用いて、アルゴリズム自体の問題点について検証が可能と考えている。また、共同研究者が保有する20症例の下肢のCT画像データベースでは、整形外科医が左右それぞれ20個の筋肉を手動で領域抽出した結果が含まれており、これを用いて開発したアルゴリズムの検証・改良がすぐに始められると考えている。次年度以降に予定している統計モデル化、およびデータの公開(患者情報を含まない統計モデルのみの公開)を視野に入れて研究を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初アルゴリズム開発用PCを購入予定だったが、現有のPCを使ったアルゴリズム開発が順調に進んだため、購入予定のPCを本アルゴリズムに最適なスペック(予定より高いスペック)に変更する事とした。このため、スペックの決定等が遅れ、購入を来年度に延期することとした。
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次年度使用額の使用計画 |
29年度の早い時期に、開発用PCを購入する。
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