研究実績の概要 |
これまでわれわれは、重度起立性低血圧治療のため、空圧ショックパンツを用いて非侵襲的に下半身を圧迫する装置を考案し、プロトタイプを開発した。今回、血圧低下治療を効率的に行うことが可能な小型空気嚢を備えた空圧パンツを開発するため、3年間の実験的臨床研究を行う。 平成30年度は、以下を行った。 1)空気嚢の製作:現在の空圧パンツの空気嚢を詳細に検討すると、外被面積に対する空気嚢面積の割合は30, 43%であり、今回は20%のものを製作した。 2)圧迫圧の検討:外被面積に対する空気嚢面積の割合20、30、40%の各パンツを装着し体表面への圧迫圧を検討した。空圧パンツはエアが入ってない状態でしっかり装着し、0-5-10-20-30-40-50-60-50-40-30-20-10-5-0 (mmHg)で約10秒ずつ加圧した。小児用血圧カフに120ccのエアを入れ、空圧パンツの腹部、大腿部、下腿部それぞれの下に挟み込み、3ヶ所の圧を記録した。パンツ内圧は50mmHgまで加圧した。20%では装着時にしっかり圧迫すれば下腿で30mmHgまでは加圧できるが、装着時の圧迫圧を差し引けば10mmHg前後の圧迫しか出来ないことが判明した。30%と40%では装着時の圧迫圧を差し引いても30-50mmHgの圧迫が可能であった。 3)ランダム起立負荷テストによる血圧低下治療に対する検討:対象は起立性低血圧患者5例。①4例で無し, 20%, 40%、②2例で無し, 30%, 40%の比較を行った。2)の結果を踏まえパンツは20mmHgで加圧した。定常状態の血圧低下度は、①ではそれぞれ-50、-31、-17mmHg、②ではそれぞれ-62、-35、-26mmHgであり、空気嚢が大きいほど血圧低下補正効果は大きかった。しかし、20%のものでも十分な補正効果があることが認められた。
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