研究課題/領域番号 |
16K01414
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
佐藤 隆幸 首都大学東京, 理工学研究科, 助教 (90326017)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 血液粘度 / 赤血球凝集度 / 凝集度制御 / ピーク周波数 / 界面沈降速度 |
研究実績の概要 |
血液粘度モニタリング手法の確立過程において、まずは血液粘度の代替指標である赤血球凝集度の制御が必須の操作となる。この課題に対して、デキストラン70を赤血球凝集剤としてヒト血液の代替試料であるブタ血液に添加し、①顕微鏡による観察、②界面沈降速度、の2つの指標を赤血球凝集径の確認に用いた。結果としてどちらの指標においても、デキストラン70の重量濃度2%で凝集度は最大値となり、濃度が2%を超えると凝集度は下降した。これらの結果から、デキストラン70による赤血球凝集度の従量制御が可能であることが分かった。
次に、血液粘度の実測部となる超音波スペクトルピーク周波数(以下、ピーク周波数)取得装置の設計の最適化を行った。赤血球凝集径の変化によって超音波減衰に変化が生じる。結果として得られるピーク周波数の変化は測定装置において超音波が試料内を通過する行程により左右され、検出感度もこれによって最適化できる。結果として最適行程が15mm付近であることが判明した。
最適調整された測定装置を用いて、デキストラン70濃度(即ち赤血球凝集度)と超音波ピーク周波数の関係を調査した。0~2.0%までのデキストラン70濃度上昇に従ってピーク周波数は下降し、デキストラン70濃度が2.0%を超えて(赤血球凝集度が下降すると)ピーク周波数は上昇した。赤血球凝集度を表す上記2指標とピーク周波数は、相関係数-0.98で極めて高い関連性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験用の流路設計において、赤血球へのダメージを少なくするためのポンプの調査や入手に時間を要したため、流速制御下での実験に関してはやや遅れが生じている。 しかしその一方で、より広いダイナミックレンジでの赤血球凝集制御に成功し、またこれまでは実験事実としてのピーク周波数シフトを成果として報告していたのみであったが、この理論的証明を行うことができた。 これらを総合すると、順調に進展していると判断するのが妥当であると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの本研究ではデキストラン70の赤血球凝集作用を利用したが、粘度までもが連動して血液模擬されるわけではない。今後は凝集度及び粘度を同時に模擬する手法を構築し、赤血球凝集度―血液粘度間、血液粘度―ピーク周波数間の定量的な関係を明らかにすることが必要となる。また界面沈降速度がHctにより変化することから、ヘマトクリットは凝集度に影響を与えることが予想され、ピーク周波数に影響を与えるパラメータであると考えられる。ヘマトクリットはヒトの個体によって差があることから補正手法の確立を行う。 また、実験装置に血液ポンプを組み込み、流速制御条件下での赤血球凝集度―ピーク周波数の関係を調査し、実用化に向けての研究段階に進める。
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