研究課題/領域番号 |
16K01421
|
研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
荒船 龍彦 東京電機大学, 理工学部, 准教授 (50376597)
|
研究分担者 |
大越 康晴 東京電機大学, 理工学部, 准教授 (10408643)
本間 章彦 東京電機大学, 理工学部, 教授 (20287428)
鷲尾 利克 国立研究開発法人産業技術総合研究所, その他部局等, 研究員 (40358370)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 血流動態可視化 / プロジェクションマッピング / 末梢性動脈疾患 / 糖尿病 |
研究実績の概要 |
本研究で開発する血流動態画像計測ソフトウエアのアルゴリズムは,被験者の下肢駆血と駆血解除に伴う皮膚色調の変化をビデオカメラで計測し,その後得られた動画から赤色変化分のみを抽出して輝度値変化を強調処理して処理画像を取得する.当該年度はまず画像処理ソフトウエアの妥当性検証と改良について取り組んだ.健常者10名について血流動態の計測と可視化を行い,解析結果画像を医師による臨床的な所見と照らし合わせ,血流強調画像を作成する上で用いる最適なパラメータ(正規化範囲幅値)をBAmp_darkを25,BAmp_lightを10とした. また本ソフトウエアにより導出された血流動態画像を下肢皮膚表在へ直接投影することにより,医師が直感的に下肢の血流状態を確認できるようにするためのプロジェクションマッピングシステムの構築についても着手した.プロジェクションマッピングにおいては血流動態画像と,下肢の三次元的形状の位置情報の統合(レジストレーション)が重要である.当該年度は,レジストレーション用のソフトウエアを開発した.本ソフトウエアは,あらかじめ下肢周囲に球状のマーカを3点設置し,三次元計測カメラ(Microsoft社,KinectV2センサー)を用いて下肢とマーカを同時に計測し,さらにプロジェクションマッピング用のプロジェクタ上部に取り付けた小型のカラーカメラによって下肢とマーカを同時計測する.開発したソフトウエアによってカラーカメラで取得した映像中のマーカの座標(二次元),および三次元データ上でのマーカ座標(三次元)を指定すると,カラー映像を三次元データ上に貼り合せたような画像の座標変換,移動,回転を行う.本レジストレーションソフトウエアを用いた評価実験を行い,平均誤差6.6mmでのプロジェクションマッピングが可能であることを確認した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画において当該年度に予定していた画像処理ソフトウエアの妥当性検証と改良については,画像処理に用いるパラメータを絞り込めたことで予定通りの成果を達成した.ただし,同じ当該年度に予定していた,『処理画像から血流不全を示す定量的指標の導出』については,末梢性動脈疾患(PAD)患者に協力していただいて実施できた計測が3例しかなく,統計的有意差を示すほどの指標を得るには至らなかった. 一方,次年度に予定していたプロジェクションマッピングシステムの構築については早期に着手し,当該年度中にプロジェクションマッピング時に必要な三次元データのレジストレーションソフトウエアの開発および評価実験による妥当性検証を行った. 前者の定量的指標導出については,平成29年度に患者データの計測を増強する予定であり,研究計画全体としては大きな齟齬が無いと判断し,(2)おおむね順調に進展とした.
|
今後の研究の推進方策 |
平成28年度末までに3例しか実施できなかった末梢性動脈疾患患者における血流動態計測の症例数については,平成29年度に実施例を増やし,また既に実施した健常者10名のデータに追加でさらに健常者10名以上の計測を行い,処理画像から血流不全を示す定量的指標の導出を完了させる予定である. 平成28年度に行った基礎的検討において発案した,従来のRGB値のR値の変化を用いる他に,特許出願準備中の別の色調変化成分を用いる手法の妥当性検証と比較実験を行い,実装する予定である. また血流動態可視化画像を患者の皮膚表在の同じ箇所へ投影する,プロジェクションマッピングシステムの構築については,平成28年度中に投影用データのレジストレーションソフトウエアを完成させることができたため,平成29年度には血流画像とカラーカメラ画像の二次元―二次元レジストレーションソフトを開発することで,血流画像から三次元データまで一貫したレジストレーションを実現するソフトウエアを完成させる予定である.
|
次年度使用額が生じた理由 |
外来での診断中および手術前,手術中において本システムによって解析した患者の血流動態を確認する手段としてタブレットPCを用い,簡便に解析結果を閲覧できるようにするシステム開発を行った.その際に購入したタブレットPCが予算計画よりも960円ほど安く購入できたため,その分の差額が次年度使用額として残った.
|
次年度使用額の使用計画 |
研究協力者である矢野智之医師が,ベルギーのゲント大学から本年度より国内のがん研有明病院に異動したことから,従来のようなメールベース,TV会議だけでなくFace to Faceの打ち合わせが可能となる.そこで打ち合わせ回数を増やし,研究のより迅速な推進を計画している.次年度使用額となった960円はその交通費に充てることを計画している.
|