研究課題/領域番号 |
16K01431
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研究機関 | 神戸市立工業高等専門学校 |
研究代表者 |
長谷 芳樹 神戸市立工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (60448769)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | FDTD / 超音波 / 骨粗鬆症診断 / 海綿骨 / 皮質骨 |
研究実績の概要 |
初年度には,ヒトの橈骨を実サイズで再現する高解像度X線CT画像を撮影し,この画像から作成した3次元モデルを用いて超音波伝搬シミュレーションをおこなった。このモデルでは,ヒトの橈骨に加え,実際の骨粗鬆症診断で用いられている超音波トランスデューサー(送受波器)も実サイズで再現している。このモデルは最新の計算機環境を用いることではじめて扱えるようになった極めて大規模なものであり,学術的にも極めて興味深いものであると考えている。このため,まずはこのモデルでの弾性FDTDシミュレーションの事例を積み上げているところである。なお,非常に大規模なモデルとなっているため現実的な時間内に計算をおこなうためには計算速度の向上が不可欠であったため,自作シミュレーションコードの最適化を図ることである程度の高速化を実現した。これにより,実際のヒトの橈骨に対して超音波パルスを照射した際の音波伝搬の様子が極めて精密にシミュレートできるようになった。この成果は今後の超音波骨粗鬆症診断装置の開発支援において大きな役割を果たすと期待される。加えて,上記のモデルよりは小規模なモデル(骨の一部を再現したもの)を用いた粘弾性FDTD法(伝搬減衰を考慮したシミュレーション)の手法も確立した。さらに,次年度以降に予定していた受波波形の解析手法についての検討も共同研究者と共に前倒しで進めており,高速かつ高精度に波形分離をおこなう手法を開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の平成28年度には手首内部の橈骨骨端部を包含する精密な3次元モデル(たとえば空間解像度50μm など)を作成し,その部位にパルス超音波(例えば1MHz など)を照射した際の音波伝搬を,3次元粘弾性FDTD法でシミュレートする予定であったが,新たな共同研究先が所有しているCT装置で撮影した画像を用いることで当初の計画よりもさらに空間解像度の高いモデル(40μm)でのシミュレーションを開始している。このモデルはヒトの橈骨(周囲の皮質骨と内部の海綿骨および骨髄を含む)に加え,実際の骨粗鬆症診断で用いられている超音波トランスデューサー(送受波器)も実サイズで再現し,MHz領域の超音波パルスの伝搬をシミュレートできるものであり,学術的に極めて興味深いものであるため早急な学術発表が重要であると考え,まずはこのモデルでの弾性FDTDシミュレーションの事例を積み上げているところである。このモデルは非常に大規模なモデルとなっているため現実的な時間で計算をおこなうためには計算速度の向上が不可欠であったため,自作シミュレーションコードの最適化を図ることである程度の高速化を実現した。 加えて,上記のモデルよりは小規模なモデル(骨の一部を再現したもの)を用いた粘弾性FDTD法(伝搬減衰を考慮したシミュレーション)の手法も確立した。ただし,上記の大規模モデルの弾性FDTDシミュレーションを速やかにおこなうため,同モデルの粘弾性FDTDシミュレーションについては優先度を下げて研究を遂行しているところである。 さらに,平成29年度に予定していた受波波形の解析手法についての検討も共同研究者と共に前倒しで進めており,高速かつ高精度に波形分離をおこなう手法を開発し,現在この成果を学術論文を投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
2年目の平成29年度には,1年目に作成した高精度3次元ヒト橈骨モデルを用いた粘弾性FDTDシミュレーションをおこなう。粘弾性FDTD法シミュレーションは1年目に小規模モデルで確立した手法を用いる。ただし,課題申請時の予定以上に高精度(高い空間解像度)なモデルが得られているため,現状のワークステーションではメモリ量および計算速度の制約から粘弾性シミュレーションが困難であることが予想されるため,ある程度シミュレーション範囲を区切ったシミュレーションとなる可能性がある(送受波器を実際の診断に用いる物より小さな相似形のものにするなど)。 そして,上記で実施したシミュレーションから得られた超音波波形について,各共同機関(ワシントン大学・アメリカ食品医薬品局(FDA)・東北大学)と協力して解析をおこなう。特に連携研究者とは連絡を密にし,骨や骨髄の弾性および粘性が受波波形にどのような影響を与えるのかについて検討をおこなう。
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次年度使用額が生じた理由 |
X線CT画像撮影の謝金等の支払いがなかったため。また,モデルが想定よりも高精度なものが実現できたためメモリ使用量が多く,予算申請をおこなっていたGPUの使用が最適では可能性が出てきたため初年度での購入を見送ったため。
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次年度使用額の使用計画 |
X線CT画像撮影の謝金および計算機資源の向上等に用いる予定である。
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