研究課題/領域番号 |
16K01437
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
東阪 和馬 大阪大学, 薬学研究科, 助教 (20646757)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ナノ銀粒子 / DNAメチル化 |
研究実績の概要 |
本研究は、化学物質曝露による毒性発現において重要な役割を果たすエピジェネティック修飾に焦点を当て、「ナノマテリアルによるエピジェネティック制御」という新たな観点のもと、物性-生体影響-エピジェネティック修飾の連関を解析することで、エピジェネティクスをも考慮に入れたナノマテリアルの安全性評価手法やハザード回避手法の開発を試みるものである。即ち、各種ナノマテリアルを曝露した際のエピジェネティック制御機構におよぼす影響について解析し、ナノマテリアル曝露に起因する生体影響の発現と、エピジェネティック修飾との連関解析を図ることで、ナノマテリアル曝露により誘発される生体影響の発現機序についてエピジェネティックな観点から解明を目指す。本年度は、医薬品の助剤や遺伝子送達担体としても期待されている非晶質ナノシリカや、高い消臭・抗菌効果を有することから、衣類や消臭剤など生活に身近な物に使用されているナノ銀粒子を用い、特にDNAのメチル化に焦点を当てることで、各種ナノマテリアルによるエピジェネティック制御機構への影響について解析した。その結果、10 nmのナノ銀粒子をヒト肺胞上皮細胞株に24時間曝露することで、DNAメチル化酵素であるDnmt1の蛋白質量の低下、およびDnmt3bの増加が認められた。一方で、Dnmt1の遺伝子発現量には有意な変動は示さなかった。さらに、ナノ銀粒子曝露によるゲノム網羅的なDNAメチル化におよぼす影響について評価したところ、ゲノム全体のDNAメチル化量が対照群と比較し有意に減少することが明らかとなった。次年度は、ナノ銀粒子によるDnmt1減少の誘導機序の解明を試みる予定である。さらに、ナノ銀粒子曝露によるハザードの発現に対し、DNA低メチル化誘導との連関解析を図ることで、エピジェネティック修飾とナノマテリアル曝露に起因するハザードの因果関係を精査する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画した内容に沿って、研究が進行しているため。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の結果を踏まえ、ナノ銀粒子曝露によるハザードの発現に対し、DNA低メチル化誘導との連関解析を図る。具体的には、ナノ銀粒子曝露により変動が認められたDNAメチル化様式の結果と、ナノ銀粒子曝露後の細胞由来mRNAと対照群由来のmRNAを用いた、マイクロアレイ解析により見出された発現変動遺伝子の結果との相関を精査することで、DNAメチル化の変動を介して誘発するナノ銀粒子のハザードを同定する。また、5-aza-dCなどのメチル化阻害剤を用いた方法や、ヒストンアセチル化や脱アセチル化による間接的な影響を考慮し、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤を処理する方法等を用い、ナノ銀粒子曝露に起因する生体影響の発現におけるエピジェネティック制御機構の関与について追究する。さらには、見出された対象領域のDNAメチル化状態、非メチル化状態について、メチル化部位特異的な定量的PCRを実施することで、その分子数や比率について定量的な解析を試みる。
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