研究課題/領域番号 |
16K01441
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研究機関 | 藤田保健衛生大学 |
研究代表者 |
山田 雅之 藤田保健衛生大学, 保健学研究科, 教授 (40383773)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | MRI / GBCA / Gd / EPMA / 造影剤 / Cyラット |
研究実績の概要 |
本研究では、造影MRI検査に生じる“Gdの脳局所蓄積”に着目し、①腎機能の低下を認めるCyラットを用いた脳内Gd蓄積モデル動物の作出、②実験小動物用コンパクトMRIによるマクロスコピックな脳画像解析、③電子線マイクロアナリシス(EPMA)による特定金属元素微視解析を組み合わせた動物実験系の樹立、を目的に段階的に研究遂行を試みた。 まず、Cyラットによる脳内Gd蓄積モデルの作出については、Gdキレート造影剤(GBCA) の投与量の検討と最適化に時間を要し、当該年度中に実現に至っていない。先行研究では健常ラットにヒトの一回通常投与量の25倍以上のGBCAを投与して当該モデルの作出を実現しており、腎機能の低下を呈するCyラットに対する投与量の低減が影響したと考える。さらに、先行研究では腎機能の良否に関わらず、GBCAの複数回被投与患者に脳内蓄積が認められたことも踏まえ、適当な投与量を継続して検討中である。 MRIでの脳内Gdの検出と可視化に関しては、基礎検討としてGdイオンのBBB透過性をMRI画像にて検討した結果、健常なBBBを有するラットの片側内頚動脈にGd3+を投与した直後、同側中大脳動脈支配域に高信号領域を認め、GdイオンがラットのBBBを通過して脳内に移行する可能性が示された。一方、GBCAについては投与直後に明らかな後輪号領域を認めなかった。これらの結果から、Gd脳内蓄積の機序として、キレートから遊離したGdイオンがBBBを透過して脳内に移行する可能性が考えられる。しかし、近年、GBCAの脳内移行に関して脳脊髄液からの脳内移行が報告されていることから、引き続き詳細な検討が必要と考える。 EPMAについては、MRIで検出可能な濃度のGdイオンやGBCAがEPMAでも十分計測できるかについて基礎検討を行った。本結果から、EPMAの感度は組織内Gdを計測しうると判断した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前述したCyラットの実験条件設定に関わる遅延に加え、関連動物生産施設の重要施設工事に伴う動物供給の停止等が重なり、当初の計画通りの進行が困難であった。 さらに、計画申請時に想定が困難であった本務以外の公的業務(厚生労働省)の委嘱に伴うエフォートの変更が影響したと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
Cyラットの供給が再開されるまでの間は、健常ラットを対象としてGd脳内蓄積モデルの作出を試み、研究の遅延を取り戻すように尽力する。 MRIおよびEPMAを用いたマルチモーダルな解析法についても、引き続きブラッシュアップを行い、作出されたモデル動物の解析を確実に遂行して当初の計画において目標とした研究成果の創出を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由については、当初計画において当該年度に作出予定であったCyラットによるGd脳内蓄積モデルが計画通りに作出されず、特にそれらモデル動物のEPMA計測費用として想定した費用、さらにそれに伴う成果の公表を想定した旅費等の支出が行われなかったことに起因する。
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次年度使用額の使用計画 |
健常ラットもしくはCyラットによるGd脳内蓄積モデルの作出を確実に遂行することにより、初年度に未実施のEPMAの有償計測やそれら一連の結果に伴う成果の公表(中間報告)を計画しており、次年度使用額についても当初の計画通り必要不可欠な研究費用と考える。
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