研究課題/領域番号 |
16K01448
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研究機関 | 茨城県立医療大学 |
研究代表者 |
松下 明 茨城県立医療大学, 保健医療学部, 講師 (80532481)
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研究分担者 |
五月女 康作 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特任研究員 (80608795)
水上 昌文 茨城県立医療大学, 保健医療学部, 教授 (00295429)
門間 正彦 茨城県立医療大学, 保健医療学部, 教授 (10274987)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 1.5T MRIによる機能的MRI / 維持期リハビリテーション / ロボットスーツ / 拡張現実 |
研究実績の概要 |
上肢運動の実施、評価用ソフトウェアの開発を行い,実験室内におけるプレ実験を行ってきた。当初,使用予定だったタッチパネル式PCのタッチパネルが期待していた精度を示さず,また最終的には故障(タッチしていないときにもタッチを検出する)が明確となり,使用を断念した。当時は,代わりになる機器がなかったため,代替手段として並行して開発を開始していた拡張現実(AR)を用いた方式を採用した。運動課題は開発中だったものをそのまま利用し,当初PCの画面に表示していたトレース対象となる物体を,ARデバイスによって対象の目前の机の上に表示し,上肢の軌道検出は,タッチパネルからデバイス付属のデジタイザに変更した。対象の手,前腕に装着した目印をトレースすることで3次元空間上の位置と時間を検出できるように,新たにソフトウェアを開発した。これにより,本研究の当初の予定である,(HALの有無によらず)上肢運動課題の提示と運動の同時計測という課題を行うことができる環境を構築でき,その調整と評価を行った。健常人およびHALを用いた事前検証などを行った。 MRI内で使用する上肢運動デジタイザの試作,評価を行った。MRIの画質への影響はなく使用できた。デジタイザは,位置情報の定量精度には課題が残るが,時間情報の記録精度は高く,MRI撮影中の運動タイミングの記録としては使用できると考えられた。 単関節HALをレンタルし,脳卒中後の片麻痺患者に対して使用した。当初の予定通り,運動量ではなく,使用時間でコントロールを行い,その前後で運動機能の評価を実施した。初期段階の評価では,単位時間当たりの運動量の増加,運動機能改善の傾向がみられており,症例数15例を目指して,計測を継続している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究環境の変更,ソフトウェア開発の遅れにより,臨床試験の開始がH30年度となり,当初の予定からは遅延が見られる。しかし,リハビリテーションや症例の確保という点で,また,計測技術の進歩という点で,よりよい環境となった。 研究環境の点では,分担研究者に加わって頂いた放射線科,リハビリテーション科の先生方のご指導の下,研究に関する意見交換を行ってきた。当院の作業療法士,理学療法士の協力が得られ,HALの利用方法などの事前トレーニングの効果もあり,スムーズに臨床研究に移行できている。開発中のリハビリテーションプログラムについても,試験運転に協力頂き,開発,改良に関しての有益なアドバイスやディスカッションを行うことができた。MRI検査環境については,既に機能的MRIを撮影していたため,比較的容易に実施できている。また,臨床でも積極的に機能的MRIを利用できるようになり,撮影機会も増えた。MRI内で使用するデバイスについては,開発が遅れているが,開発におけるアドバイスを頂きつつ,ディスカッションを行い,評価,検証を継続している。拡散強調画像によるテンソル解析も臨床でも利用しており,予定通り撮影が可能であった。 ソフトウェア開発の面では,大きな方向転換を必要としたが,拡張現実用デバイスの発売により,解決が困難であった軌跡のトレース機能も目処がついたが,評価指標としては検証途上であり,従来通りのトルクや運動量などとともに評価を行っている。 当初計画よりも遅れがあり研究期間の延長を行ったが,平成31年度中に終了できる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
対象患者の募集が一定せず,また,評価や実施メンバーも人員の確保の面から,集中した臨床研究の実施が難しいと判断した。そのため,対象患者としては,当院で痙縮に対して継続介入を行っている患者とした。当院に定期的な入院とリハビリテーションを行っているため,従来のリハビリテーション介入とHAL介入との差について,比較的直接的に比較可能となった。これにより,患者確保,対照患者の確保の面で大きく改善した。 これを受け,平成30年より単関節HALのレンタルを開始し,臨床研究を実施できている。実際,患者は定期的に入院,実施,評価を行えている。しかしながら,年内全期間のレンタルは金額的に難しいため,期間の調整,人員の配置方法などについては,今後も検討,改善が必要と考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究開始時(初年度)に異動があり、研究体制の再構築に時間を要した影響を受けた。また、タッチパネルの故障など、予定外の事象が発生した。そのため、研究参加者の募集方法の変更、タッチパネルを使用せず、複合現実デバイスへのソフトウェアの移植などの作業が発生したため、臨床研究開始が遅れ、研究期間延長が必要となった。
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