当初の予定ではラット後肢膝関節拘縮モデルに対し、CPMを作成して様々な様式の関節可動域運動を行い、関節構成体の変化を病理組織学的に観察する予定であったが、CPMの実験適応が不十分であったため予備実験で作成した「徒手的に可動域運動を行った動物」を用いて検討を行った。 関節可動域(平均±標準偏差)は不動群が69.0±3.7度、運動群は41.7±7.8度、対照群では30.3±2.9度であり、今回行った関節可動域運動では運動群と不動群では関節可動域制限角度は有意に小さく、関節可動域運動の効果があったと考えられる。しかしながら、運動群と対照群で有意に可動域制限が生じていた。関節不動から2週間では関節構成体(軟骨など)による制限よりも筋性のものが大きいとされ、今回行った可動域運動のプロトコルでは筋による可動域制限を抑制することは出来なかった事が示唆される。 膝関節後方の関節包に対し免疫染色による二重染色(α-SMA抗体、CD34抗体)を用い、α-SMA抗体陽性/CD34抗体陰性の細胞数を2mm2の範囲で計測したところ、不動群では12.7±6.1個、運動群では4.8±1.7個、対照群では3.7±1.4個(平均±標準偏差)であった。この細胞は筋線維芽細胞と考えられ、不動群では対照群と比較して細胞の発現が有意に大きく、関節包の線維化が生じている事を示唆している。一方、運動群と対照群では有意差がみられず、運動群と不動群で有意な差が見られたことから、今回のように可動域制限を予防することが出来ない程度の運動であっても組織の線維化を生じるとされる筋線維芽細胞の発現を抑制することができることが示唆された。 CD34抗体陽性の細胞は対照群、運動群では血管内皮と考えられる部位に観察されたが不動群では血管ではない部分にも多数観察された。この細胞についても今後も継続して標本解析および報告を継続する予定である。
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