研究課題/領域番号 |
16K01451
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
太治野 純一 京都大学, 医学研究科, 研究員 (00755697)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 重力生理学 / 遠心人工重力 / 学習能力 |
研究実績の概要 |
本研究は、疑似的に再現した無重力状態で飼育するとラットの学習能力が低下する現象と、それを防止するために1Gから2.5Gの荷重介入を加えることで遠心人工重力の効果を検証するという試みです。
現在はラットの後肢懸垂モデルを対象に、学習能力が低下することを行動観察(Novel Object Recognition Test:新奇物体認識試験)にて検証中です。これを基礎の対照群として、懸垂期間中に各強度の荷重介入を施行し、学習能力の低下が抑制されるかを検証しています。介入強度は1G・1.5G・2.5Gを予定しています。2週間の後肢懸垂期間のうち各強度の介入を6日/週実施し、介入期間終了直後(2W)とさらに2週間の回復期間をおいた後(4W)の2時点、非懸垂群・対照群と合わせて検証しています。 目下のところ、後肢懸垂終了直後において各実験群ともに非懸垂群より著明な学習能力の低下が認められ、1.5G群の低下は他の群に比較して少ない傾向がありましたが、有意差はありませんでした。回復期間後では各群に回復が認められました。1.5G群は非懸垂群には及ばないものの実験群の中で最も大きく回復し、2.5G群ではかえって回復が抑制される傾向が認められました。 これまでの結果で、疑似微小重力環境がラットの学習能力を障害することが明らかになりました。また、一時的に再荷重する(1G介入)よりも遠心重力を用いて高荷重をかける(1.5G)方が回復を促進する可能性があり、また高すぎる荷重(2.5G)ではかえって回復を妨げる恐れがあることが明らかとなりました。これらの成果は、宇宙空間の長期滞在時における遠心重力介入の効果を裏付けるものであり、また長期臥床時のリハビリテーションなどにおいて、静的な荷重以上の運動の必要性を示唆するものでもあります。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
モデル作成は比較的順調に進展し、NOR試験の機器購入および習熟に時間を要したが、データの一部を解析できる段階にまで至ったため。
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今後の研究の推進方策 |
現在はNOR試験のうち接触回数(ラットが物体に関心を示して触れた回数)のみを評価しているため、次年度では接触時間も評価するとともに対象数を増やして、データの信頼性を高める。また海馬新生細胞の神経組織化学的評価・免疫組織化学の検討も始める。
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次年度使用額が生じた理由 |
NOR(Novel Object Recognition:新奇物体認識)試験用の機器について、当初は実験機器メーカーの実験セットを購入する予定であったが、市販の材料を組み合わせて同様の設備を構築できることが分かり、全て汎用の部品に切り替えて自作したため、当初の予定より廉価に抑えることが出来た。
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次年度使用額の使用計画 |
海馬の免疫組織化学評価に必要なマーキング試薬の購入に充てる予定。
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